
「まるで夢のような話。最初は信じられなかった」
福井県若狭高の宇宙食サバ缶の物語がテレビドラマになると耳にしたときのことを、若狭おばま観光協会の池田さんはこう振り返る。同時に思ったのが「小浜の魅力を全国にPRする大きなチャンスになる」。同協会では早速、JR小浜駅前の観光案内所にフォトスポットを設けた。ホームページやSNSでも積極的に情報発信を続けている。
「ドラマ見て来ました」「ロケ地を巡りたい」。案内所には放送開始直後から続々と観光客が訪れている。「反響は予想以上。ドラマの力ってすごいと思った」と池田さんは話す。
小浜市が本格的にドラマの舞台になるのは、落語家として成長するヒロインを描いた2007年のNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」以来。放送中の「サバ缶、宇宙へ行く」では春先から市内各地で撮影が行われ、いつもは静かな小浜のまちが活気づいた。
海岸沿いの人魚の像や海鮮市場「若狭小浜お魚センター」などなじみの場所が多数登場するのに加え、地元の人たちがエキストラとして出演しているのも市民が親しみをもって番組を見ている理由だ。オバマ米大統領が就任し「オバマフィーバー」に沸く小浜のまちの様子や、廃校中止を求める署名集めのシーンにも多くの市民が出演した。
「きのう○○君、出とったなあ」「あの後ろ姿、△△さんやろ」
放送翌日には市民の間で番組のことがひとしきり話題になるという。
若狭高のサバ缶が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙日本食に認定されたのは2018年のこと。なぜこのタイミングでドラマ化されたのだろう。
「生徒みんなが思いをつなぎ、一つの夢をかなえていくという実話を元にしたこのドラマが、今の不安定な世の中には必要なのではないかと思った」と番組プロデューサーの石井さん。「これまでラブストーリーが中心だった『月9』らしくないかもしれないが、多くの中高生とその親に見てもらいたいと考え、週初めのこの枠での放送となった」と狙いを話す。
ドラマの影響で市民は活気づき、多くの観光客が小浜を訪れている。一過性に終わらせず、この効果をどのように持続させていくかが大切だ。
ちなみに「ちりとてちん」の終了から20年近くたつが、池田さんによるといまだにロケ地巡りに訪れる観光客は少なくないという。放送を縁に始まった「ちりとてちん杯全国女性落語大会」も昨年までに17回を数える恒例の催しとなった。「サバ缶、宇宙へ行く」の放送をまちの活性化にどう生かしていくか。
市は番組放送終了後、ドラマで使用された美術品の展示やサバ缶グルメ料理体験、特別体験ツアーなどのイベントを計画しているという。一過性のものだけでなく、長く次につながる催しを市民みんなで考えるといい。
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