廃棄予定の野菜を使った雑貨を手にする近藤さん=敦賀市古田刈

 フードロスに悩む農家を応援しようと、福井県敦賀市古田刈の近藤さんが廃棄予定の野菜を使った雑貨のカードスタンドを手作りし、オンラインで販売している。野菜をミキサーで細かく砕き、石粉粘土を混ぜて固めるオリジナルの制作方法という。「雑貨を通して野菜づくりにかける農家の思いを知ってほしい」と話している。

 近藤さんは祖母が美浜町の元梅農家で、農家の苦労や収穫の喜びなどを身近に感じてきた。東北大に進学後、仙台市で週1回開かれる野菜の即売会に通うようになり、出店する農家と親しくなった。形が整わずに廃棄される野菜があることを知り、「丹精込めて作ったのに農家の苦労が報われないのは残念。生まれ変わらせたい」と思い立った。学生時代から破棄される野菜をどのように活用しようか試行錯誤を重ねた。紙皿を作ることも検討したが、うまくいかず雑貨にたどりついた。

 作品は手のひらサイズの大きさで、切り込みが入り名刺やカードなどが挟める。穴を開けたタイプもあり、ドライフラワーやお香を差し込む。アクリル絵の具で顔を描き、一つずつ手作業で仕上げている。農家の味方になって畑を見守る存在にしたいとの思いから「石の精霊」と名付けた。

 大学を卒業し敦賀に戻ってからは、美浜町などの農家から廃棄野菜のホウレンソウやチンゲンサイ、ブルーベリーを譲り受け、制作活動に励んでいる。今年5月には坂井市内のカフェで、収穫を手伝う中で農家と交流する様子を写した写真展も開いた。

 将来について近藤さんは「廃棄野菜でできた雑貨や新鮮な野菜を購入できる直売所をつくりたい」と夢を描いている。雑貨はネットショップ「スールラテール」で販売している。

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