
水月湖で始まった11年ぶりの年縞掘削=23日、若狭町
福井県若狭町の水月湖で23日、11年ぶりの年縞掘削が始まり、初日は湖底0~1メートルの採取に成功した。掘削は70メートルを目標に7月末まで続けられ、年代や気候を詳細に調べ、気候が慢性的に不安定化する状態「暴れる気候」の解明につなげる。
立命館大など国内外の研究機関によるプロジェクトチームの研究の一環。プロジェクトリーダーで県年縞博物館の研究マネジャーを務める同大の中川毅教授や、これまでも作業に当たってきた西部試錐工業(長崎県)の北村会長らが取り組む。
初日は天候が回復した午後から北村会長ら3人がボートで掘削地点に向かい、掘削現場となるやぐらの上で4時間ほど作業した。全長1メートルのステンレス製の筒を湖に沈めて底に差し込み、軟らかな質感の湖底0~1メートルの年縞を慎重に引き上げていった。湖底から深くなるにつれ、硬く安定した地質になるといい、24日からは全長2メートルのステンレス製の筒を使い、本格的に1日数本の年縞を採取していく。
北村会長は「今のところ順序よく作業が進んでいる」とほっと一息。今回の掘削で現場の引退を表明しており「自分の最後の仕事でこの大きなプロジェクトに参加できるのが誇り。この後も気を引き締めて掘削に当たりたい」と話す。中川教授は「北村さんとは19年間一緒にやってきた。今回も今までのようにきちんと研究成果を出したい」と話した。
年縞は1年に1枚ずつ堆積する特殊な地層。含まれる花粉や元素組成を調べることで当時の気候が分かる。水月湖では、1993年の第1次調査で7万年分45メートル連続していることが初めて確認された。2006、12、14年にも調査があり、世界標準の「年代のものさし」となっている。
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