鯖街道沿いの民俗行事を撮影した須川さんと資料集=小浜市内

 小浜市の男性が若狭地域から京都に食材を運んだ「鯖街道」沿いの地域で受け継がれる約180の民俗行事を写真に収めた資料集を発行した。約25年かけて撮影した約2400枚を地域住民からの聞き取りなどを基にした解説文とともに紹介。男性は「地域それぞれに特色があり、こんなに多様な行事があるんだと知ってもらえたら」と話す。

 同市の写真愛好家、須川建美さんは、1998年に初応募したコンクールで小浜市の放生祭を撮った作品が入賞、これをきっかけに若狭地域をはじめ鯖街道沿いの民俗行事を撮影するようになった。鯖街道が今年、日本遺産認定10周年を迎えたのを機に資料集「御食国(みけつくに)若狭小浜から京へ 写真で綴(つづ)る鯖街道の民俗行事」としてまとめた。

 複数のルートがある鯖街道の中で最短の「針畑越え」、最大の物流量を誇った「若狭街道」、琵琶湖の水運も使った「九里半街道」が通る小浜市、若狭町、滋賀県の大津市と高島市、京都市の3府県5市町に足を運び撮影。小浜市の放生祭や雲浜獅子、若狭町三宅の六斎念仏のほか、京都三大祭りの一つ「葵祭」など多様な祭礼や芸能を取り上げた。行事の記録として学術的な側面を持つ一方、行事を執り行う人々の真剣な表情や笑顔で楽しむ子どもたちなどを切り取っている。

 小浜市神宮寺区でお盆に営まれている「仏さん送り」と酷似した行事が滋賀、京都にもあり「鯖街道は物だけでなく文化も一緒に運んでいたことを感じさせる」と須川さん。一部の行事では供え物にサバが登場するなど“鯖街道”らしさも感じられるという。

 人口減少などで休止や、やり方を変更した行事も出てきている。須川さんは「集落の歴史として話題になれば」と願った。

 A4判232ページ。250部を発行し協力した集落や寺社のほか、小浜市と若狭町の図書館などに寄贈した。嶺北では県立図書館などで閲覧できる。非売品。

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