今年の「夷子大黒綱引き」で見物客が見守る中、懸命に綱を引く参加者=2025年1月19日、敦賀市相生町

 福井県敦賀市の冬の風物詩で国指定重要無形民俗文化財となっている「夷子(えびす)大黒綱引き」について、運営団体の「敦賀西町の綱引き伝承協議会」は来年1月の開催見送りを決めた。大綱作りや運営に必要な協賛金集めに当たる人手の確保が困難なためとしている。協議会は「運営体制を整え、再来年は何とか再開したい」としている。

 夷子大黒綱引きは相生町内の「西町」で400年以上続く伝統行事で、毎年1月の第3日曜に開催。漁業関係者の「夷子方」と農業関係者の「大黒方」に加えて見物客も綱を引き合い、夷子方が勝てば豊漁、大黒方が勝てば豊作とされる。

 2016年までは旧西町住民でつくる保存会が運営していたが、会員の高齢化や資金不足を理由に17年は中止となった。継続を望む声が高まり、NPO法人THAPや敦賀商工会議所、敦賀青年会議所、敦賀市漁協、JA福井県敦賀支店、敦賀信用金庫などでつくる敦賀西町の綱引き伝承協議会が立ち上がり、18年に復活した。

 伝承協議会によると、熟練の技を要する長さ約50メートルの大綱作りで中心的役割を担っていた数人が他の用事のため、来年1月の本番に向けて協力が難しくなったという。また、神事やスタッフの弁当代に充てる協賛金集めの人員も十分にそろえられなかった。

 夷子大黒綱引きは新型コロナ禍を経て、2024年に4年ぶりに再開された。同年からは大綱作りのために広い会場を用意して市内外の人に参加を呼びかけるなど、伝統行事への興味や関心を高める努力を続けてきた。

 伝承協議会の事務局長を務める、NPO法人THAPの寺田理事長は「楽しみにされていた皆さんには申し訳ない気持ちでいっぱい」とした上で「貴重な敦賀の文化財を守りたいという気持ちは我々としては強いので、地元西町の皆さんはじめ関係者とともに継承の仕方や運営体制を考えていきたい」としている。

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