
第2次世界大戦中、ナチス・ドイツの占領下にあったチェコスロバキア(当時)のテレジン収容所で過酷な生活を送っていた子どもたちが描いた絵を紹介する企画展が福井県敦賀市資料館「人道の港 敦賀ムゼウム」で開かれている。美術の先生から「楽しかった日々を思い出そう」と励まされ、チョウチョや家族の絵を残した子どもたち。不安や恐怖を抱え、明日を夢見ながら描いた作品が並んでいる。
「テレジン収容所の幼い画家たち展」は、ムゼウムと「テレジンを語りつぐ会」の共催。同会代表のノンフィクション作家野村さんは、ナチスによるユダヤ人虐殺の歴史を調べ、著書で伝えてきた。テレジン収容所で描かれた子どもたちの絵に心を打たれ、30年以上前から全国各地で展覧会や講演で紹介している。
テレジン収容所はアウシュビッツ収容所へユダヤ人を移送する中継点。1万5千人の子どもは次々とアウシュヴィッツへ送られ、解放時に生き残ったのはわずか100人だったという。
テレジンで笑顔を失っていた子どもたちに、同じく収容されていた女性画家が「楽しかったことを思い出して絵を描こう」と語りかけた。1945年、解放された収容所からは約4千枚の絵が見つかったという。今回の企画展ではパネル33枚で一部を紹介している。
子どもたちは家族や仲良しの友達、遊園地など楽しい思い出、自由の象徴としてチョウチョなどを描きつつ、粗末な木の3段ベッドや食べ物への渇望といった苦しい状況も表現した。次第に紙やクレヨンがなくなり、ドイツ兵が捨てた紙などにも描いたという。
野村さんは企画展に当たって「夢や希望が描かれた絵からは子どもたちの声が聞こえるはずです。子どもたちの平和な世界への願いが伝わってくるはずです。子どもたちの声を聴いてください。子どもたちの名前を呼んであげてください」とのメッセージをムゼウムに寄せた。
アウシュビッツ収容所内でホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の惨状をペン画で描いたポーランド出身の画家ヤン・コムスキーの作品28点も併せて展示している。野村さんに託された作品で、収容所内で行われた吊(つ)るし刑や銃殺などの様子が精細な筆致で描かれ、生々しく悲劇を伝えている。
企画展は3月1日まで。水曜休館。年末年始は12月30日~1月2日が休館。
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