
漁師民宿が連なる若狭湾沿いの集落=14日、若狭町常神
漁師経営の民宿数が全国1位の福井県若狭町で、若狭三方五湖観光協会などは地域独自のオンライン旅行代理店(OTA)を構築し、ネット上の民宿予約の一括管理を目指す取り組みを進めている。民宿業者は空室管理や電話対応などの手間がなくなり、高収益化が期待できる。地域OTAに入る予約の代行手数料は地元に還元する考えで、地域への経済効果も見込めるとしている。11月から実証を始める。
事業は観光庁の「観光DX推進による地域活性化モデル実証事業」に採択され、若狭三方五湖観光協会や町、福井銀行でつくるコンソーシアムが国の支援を受けて進めている。
町内の民宿は63軒で、農林水産省が5年ごとに実施する統計調査・漁業センサス(2023年)によると、漁師経営の民宿の数は全国最多となっている。若狭湾と三方五湖の豊かな水資源に恵まれ、常連客を中心に観光客の人気は高いという。
一方、旅行業界は全国でオンライン予約が進みネットへの対応が急務となっているものの、町内民宿の多くは家族経営で、独自で対応するには限界がある。
実際、同コンソーシアムによると、町内民宿では20軒ほどは外部OTAを利用せず、今も電話予約のみで受け付けている状況。▽対応に時間がかかる▽予約台帳や領収書などの手書き管理が大変▽過剰予約のトラブルが発生する-といった課題を抱える。
取り組みでは、若狭三方五湖観光協会が地域OTAを立ち上げ運営を目指す。観光協会が取り組むのは全国でも初めてで、宿泊希望者が地域OTAで予約すれば、外部OTA予約の際にかかっていた手数料が同観光協会に支払われ、町の観光振興に活用される仕組みとなっている。
地域OTAと外部OTAの予約管理を一括管理するシステムを導入し、二重で予約を受け付けてしまうミスを防ぐ。請求書や領収書も作成できる。電話やファクスでの予約も従来通り受け付けるが、数は徐々に減少していくとみている。
観光協会の担当者は「急がず徐々に利用する事業者を増やし、形を作っていく。事業を成功させ、全国のモデルケースにしたい」と力を込める。
コンソーシアムは9月に3回に分けて民宿業者への説明会を開いた。仕組みやメリットを聞いた事業者からは「観光協会や町がサポートしているので安心」「初めての取り組みなので抵抗を感じる事業者もいる。良さを伝えていくことが大事」との意見があった。
全体説明会のほか個別の民宿事業者への説明も継続しており、賛同者は徐々に増加しているという。観光協会の担当者は「最終的には全民宿で利用を目指したい。宿泊代行の手数料の活用も今後考え、無理のない持続可能な観光モデルを構築し、若狭町の漁師民宿文化が将来的に続くようにしたい」と話している。
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