1940年に開催されるはずだった〝幻の万博〟の入場券を手にする藤田さん=小浜市内

 1940年に日本で開催されるはずだった「紀元2600年記念日本万国博覧会」の入場券を所有する福井県小浜市の男性が、大阪・関西万博の招待券を受け取り、このほど会場を訪れた。“幻の万博”の入場券は祖父の遺品で、男性は「まさか使えるとは思わなかった。祖父からいい贈り物をもらった」と話している。大阪・関西万博は13日、半年間の会期に幕を閉じる。

 「紀元2600年記念日本万国博覧会」は40年に東京と横浜で開催予定だったが、日中戦争の激化で延期され、そのまま開催されなかった。入場券は38年に発売され、延期決定後に払い戻しも行われたが、保有したままの人も一定数いたという。70年の大阪万博、2005年の愛・地球博でも所有者に招待券が贈られ、今回の大阪・関西万博も手続きを行えば大人2人分の招待券が受け取れる措置が取られた。

 小浜市の藤田さんは、祖父が1990年に亡くなった後、遺品の中から入場券を見つけた。入手経路は分からないが祖父は発売当時、陸軍に所属し千葉県内に配属されており、「その際に誰かからもらったのではないか」と推測する。

 中央に塔のような建物が描かれた入場券は12枚つづりで、縦9・7センチ、横18・5センチの冊子状にまとめられている。表紙に「抽籤(ちゅうせん)券附回数入場券」の文字と6桁の抽選番号が記されている。付属の注意書きを見ると、当選金は最高2千円だったようだ。

 藤田さんは10月3日に妻と2人で万博会場を訪れ、パビリオンなどを見学した。“幻の万博”の入場券も確認後に返却され、会場内で手にして写真を撮っているとボランティアスタッフから声がかけられたという。「粋な計らいで万博を楽しめた。貴重な経験だった」と話した。

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