
渡辺淳さんが1980年代に描いた油彩画約40点を紹介している展示会=おおい町岡田の若州一滴文庫
福井県おおい町出身の画家、渡辺淳(すなお)さん(1931~2017年)の作品を紹介する「渡辺淳展~1980クロニカル~」が同町の若州一滴文庫で開かれている。同郷の直木賞作家、故水上勉さんとの歩みの中でさまざまな出来事が重なった1980年代の作品に焦点を当て、古里の風景など油彩画約40点を並べた。10月13日まで。
渡辺さんは水上さんの小説の装丁などを担当した。同文庫は所有する渡辺さんの作品の中から毎年企画展を開いている。
水上さんが1985年に一滴文庫を開設するのに当たり、渡辺さんは発起人の一人に名を連ねた。同文庫開館を目前にした84年、近くの佐分利川を描いた100号の油彩画は、暗い川面に色調を抑えた緑色や、白色で周囲の草むらを表現。周辺を舞う何匹もの白色のチョウが際立っている。
1989年、中国で天安門事件を目撃した水上さんは、帰国後すぐに心筋梗塞で入院した。励ますように同文庫の裏山の風景を描き、水上さんに贈った絵も展示されている。「枕もとにおいて、また泣きました。心あたたかい淳さんがつたわります」と、水上さんから送られた手紙もあり、2人の親密な関係が垣間見える。
また同文庫発刊の冊子「一滴」への寄稿文を集めた渡辺さんの自叙伝「山椒庵(さんしょうあん)日記」(99年)の内容をパネルで紹介。一滴文庫で子どもと触れ合った当時の心境がうかがわれる。このほか、装丁の原画なども並ぶ。
一般300円。高校生以下は無料。午前9時~午後5時。火曜休館。
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