• 水墨で描いた敦賀空襲時の市内の俯瞰図などが展示されている「戦後80年」展=敦賀市立博物館
  • 敦賀空襲による火災の熱で溶けた瓦や瀬戸物=敦賀市の「人道の港 敦賀ムゼウム」
水墨で描いた敦賀空襲時の市内の俯瞰図などが展示されている「戦後80年」展=敦賀市立博物館

 「戦後80年展 敦賀空襲を伝えつなぐ」が、福井県敦賀市立博物館と市資料館「人道の港 敦賀ムゼウム」で同時開催されている。日本海側の沿岸都市として初めて大空襲に遭い、市街地の大半が焼け野原となった80年前の出来事を写真や絵、戦災資料を通して克明に伝えている。

 市立博物館では、荒谷さんが水墨で描いた敦賀空襲時の市内の俯瞰図(ふかんず)が展示されている。荒谷さんは10歳のときの記憶をひもとき、当時住んでいた同市山から眺めた市内の空襲被害を思い出しながら描いたという。2020年に同館に寄贈され、初の公開となる。

 港町敦賀と関わりが深い、太平洋戦争時の戦没船にも焦点を当てた。多くの民間の船舶が軍に徴用され、軍事作戦や補給、輸送に従事したが、十分な護衛もない中、潜水艦や飛行機の攻撃を受けて多くの船舶や船員が海に沈んだという。満州丸や天草丸など敦賀港に寄港していた7隻について、戦没者数や戦没海域などをパネルで紹介している。

 一方、ムゼウムでは空襲時の火災の熱で溶けた瓦や瀬戸物、焼夷弾(しょういだん)の破片など、戦争の生々しい記憶を伝える資料が並んでいる。空襲直後に市庁舎前広場で発行された罹災(りさい)証明書(写し)も展示。空襲翌日には証明書を発行していることを拡声器で呼びかけるトラックが市内を走り回り、復興にかける敦賀の人々の意気込みは強かったという。

 敦賀市立博物館の学芸員は「平和な時代を生きるわれわれが戦争被害の実態を実感することは難しい面もあるが、戦争に至るまでに何があったのか知ることはできる。戦後80年の節目に私たちができることが何か考える機会になれば」と話していた。

 市立博物館での展示は8月24日まで、ムゼウムでの展示は10月13日まで。

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