敦賀と琵琶湖北岸を結んだ「深坂古道」の入り口に立つ案内板。紫式部が塩津山を越えたときの歌も紹介されている=敦賀市追分

 福井県越前市ゆかりの紫式部が主人公のNHK大河ドラマ「光る君へ」で、敦賀にかつてあったとされる迎賓館「松原客館」が5月26日からの「越前編」で登場する。市は放送に合わせて同日、粟野公民館でパブリックビューイング(PV)を開催。式部と敦賀のつながりを発信し、観光誘客を図る。

 越前国府があった越前市は紫式部が生涯で唯一、都を離れて暮らした地。国司となった父為時と1年余りを過ごしたとされる。越前編では都から越前国府への下向の旅の途上に通った敦賀での場面も描かれる。

 敦賀市の地域史研究団体「気比史学会」などによると、松原客館は主に日本海対岸の渤海国からの使節を迎える迎賓館施設で、9世紀前半の平安時代初頭に設けられた。使節団が上京するまでの間、一時的にとどめ置かれ、食料や衣服などが支給されていたとみられる。松原客館の場所は気比神宮付近や来迎寺・永建寺付近一帯(現在の松島町付近)、西福寺、櫛川遺跡など7カ所が推定されるが正確な位置は不明だ。

 995(長徳元)年、文化交流や交易のため宋人70人余りを乗せた商船が若狭国へ流れ着き、その後、松原客館へ移された。漢詩文に熟達した為時は詩を交わして意思疎通を図り、交流に努めたとされる。物語では、宋の見習い医師が紫式部に影響を与える人物として描かれるという。

 近江国塩津と敦賀を結ぶ深坂古道(深坂峠)は京からの下向ルートで、敦賀側の登り口に立つ案内板には式部が峠を越えた際に詠んだ歌が紹介されている。ただ、越前市と違って敦賀には式部ゆかりの史跡が少なく、市民にもそれほど知られていない。PVを企画した市観光誘客課の担当者は「古代から大陸の玄関口として重要な地であった敦賀を広く発信し、市民の機運醸成や誘客につなげたい」としている。

 PVは午後7時から。気比史学会の会長が「平安時代の敦賀について」と題したミニ歴史講座を行った後、参加者で番組を視聴する。無料。申し込み締め切りは22日。問い合わせは市観光誘客課=電話0770(22)8128。

(※福井新聞社提供。無断転載を禁止します。記事に関するお問い合わせは福井新聞社へ。)