福井県美浜町若狭国吉城歴史資料館はこのほど、同町と北陸新幹線沿線の長野県軽井沢町の歴史的なつながりを紹介するパンフレットを発行した。幕末に若狭国佐柿村(現美浜町佐柿)に生まれた実業家・山本直成(なおしげ)の子である直良(なおよし)が軽井沢町の「旧三笠ホテル」(国重要文化財)の創業者であることを伝えている。
直成(1838~1915年)は岩倉具視の政治活動を支えた小浜藩士で、明治時代には実業家として大隈重信や渋沢栄一ら政財界の要人と交流した。直良(1870~1945年)は直成の次男で、父が軽井沢に購入した広大な土地を活用し、避暑地としての発展を見据えた開発事業の中心として三笠ホテルを開業させた。
パンフレットは、来年3月の北陸新幹線敦賀開業を記念して発行した。直成について伝えるA4判4ページ、旧三笠ホテルと直良に関するA4判2ページがある。
三笠ホテルは日本人だけで建設された純西洋式の木造建築で、1906年に開業したと紹介。高潔さや華やかさを兼ね備えた国際的な避暑地としての軽井沢の発展に貢献したとしている。直良の妻・愛子は、白樺派の作家有島武郎の妹であったため、三笠ホテルは同派の作家たちのサロンとして利用されたことも紹介している。
直成については、近代産業の発展をけん引した日本郵船などの複数の企業の役員を務めていたことなどを伝えている。館長は「明治時代の日本の近代化を佐柿ゆかりの親子がけん引したことを知ってほしい」と期待している。
パンフレットは若狭国吉城歴史資料館や町内の公共施設、県内の博物館などで無料で配っている。問い合わせは同館=電話0770(32)0050。
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