
民謡踊りを楽しむクルーズ船客ら=11月7日、敦賀市神楽町1丁目
クルーズ船客(左)の質問に答える敦賀高生ら=11月7日、敦賀市曙町
和太鼓体験を楽しむ外国人ら=11月7日、敦賀市神楽町1丁目
外国クルーズ船の敦賀港への寄港について、本年度予定されていた計9回の運航が先月終了した。過去最多の寄港数で計約1万4千人が来訪し、寄港のたびに敦賀のまちなかは活気づいた。観光客の受け入れ環境整備やおもてなし力の向上といった成果が生まれている一方、港から市街地への回遊促進や消費拡大が今後の課題だ。
大型客船ダイヤモンド・プリンセスが寄港した11月7日、気比神宮向かいの歩道スペースでは多くの外国人が和太鼓や民謡踊りに興じた。米国から訪れた観光客は「日本の文化を体験できるのは楽しい。いろいろな港に行っているが、敦賀のおもてなしはすばらしい」と話し、法被姿で踊りの輪に加わった。
気比神宮前では敦賀高生や東浦中生が観光案内に奮闘。「CAN I HELP YOU?(お手伝いしましょうか)」などと書かれたボードを手に乗客らに声をかけ、記念写真を撮影したり、観光地までの道順を伝えたりした。敦賀高創生部1年の生徒は「敦賀にこれだけ多くの人が来てくれるのはうれしい」と笑顔を見せた。
気比神宮門前の神楽町1丁目商店街は今年4月、訪日外国人が買い物をした際、消費税の免税手続きを1カ所で行う免税一括カウンターを商店街内に設置。各店舗では英語表記のメニュー表を用意するなど受け入れ態勢を整えてきた。
来春には神楽通りの歩道拡幅工事が完了する予定で観光客らが滞留しやすい環境が整う。同商店街の理事長は「人を集める仕掛けを継続し、物販や飲食など各店舗の売り上げ増につながるよう改善を重ねていきたい」と語る。
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日本各地の港では大型クルーズ船の寄港が活発だ。国土交通省がまとめた2024年の国内寄港回数は2479回(速報値)と過去最多だった18年の約8割の水準に回復。各自治体は歴史や自然など、その地域ならではの観光資源を売りに誘致を進めている。
敦賀の場合、大型クルーズ船の多くが着岸する鞠山南岸壁から、主要な観光スポットまで歩いて行きにくい点は一つのネックだ。同岸壁は荷役のための大型車両が頻繁に行き交うことから、安全確保のため歩行者の通行は制限され、船乗客の移動はシャトルバスやタクシーに限定されている。
県が20年度に策定した敦賀港の長期構想では市街地に近い川崎松栄地区にクルーズ国際フェリーターミナルの形成を検討するとしている。市の担当者は「敦賀港の整備が進めば船が寄港する埠頭(ふとう)や岸壁の位置関係が改善されると期待している」とし、当面は無料のシャトルバス運行で市街地への周遊を促していく方針だ。
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乗船客は富裕層が多く、寄港地での観光消費額は1人あたり1~2万円、1隻あたりの経済効果は約5千万円とされる。ただ、乗客が船を降りた後に向かうオプショナルツアーの行き先は永平寺や一乗谷朝倉氏遺跡、越前和紙の里など市外も目立つほか、敦賀駅から列車で県外へ行く人も一定数おり、必ずしも敦賀に「潤い」がもたらされていないのが現状だ。市内の商店街関係者は「当初思い描いていたインバウンドがお金を落としていくイメージには遠い」と渋い顔だ。
市は11月7日、乗客対象に気比神宮や奥井海生堂を訪れるモニターツアーを実施。来年度以降の本格販売を検討し“稼ぐ観光地”を目指していく。敦賀港には来年度5回のクルーズ船寄港が予定されており、市は「乗客を飽きさせず満足度を高めることが次回の寄港地に選ばれることにつながる。にぎわいイベントや体験メニュー充実に力を入れていく」とする。
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