2020年1月に行われた夷子大黒綱引き。今年は準備段階の大綱作りから市民の参加を募っている=敦賀市相生町

 福井県敦賀市相生町の旧西町で400年以上続いてきた国指定重要無形民俗文化財の「夷子(えびす)大黒綱引き」が1月21日、新型コロナウイルス禍による中止から4年ぶりに行われる。地元民だけでなく見物客も綱を引くことができるユニークな“参加型イベント”で、再開に当たり今回初めて、準備段階の大綱作りにも市内外の人に参加を呼びかけより参加型を前面に打ち出している。製作会場は広い旧敦賀北小体育館に設定しイベントとして開く。復活に向け関係者の思いも徐々に熱気を帯びてきた。

 ■全国でも珍しい

 祭りは夷子方と大黒方が綱を引き合い、夷子方が勝てば豊漁、大黒方なら豊作の1年になるとされる。幕末に記された「敦賀志」には綱引きで使われていた古衣装について「美々しくまた古雅なり」などと記されている。古式ゆかしい豪華な衣装だったと考えられており、町のにぎわいと繁栄の中で生まれたことがうかがえる。

 市立博物館の副館長は「江戸初期の豪商のような立場の人たちが祭りを支え、長く受け継がれてきたのだろう」と話す。町の中心部で生まれた祭りというのも特徴的で「誰でも参加でき、誰でも関われる祭りは全国的にも珍しい」と価値が高いことを強調する。

 ■伝統守らないと

 綱引きは2016年まで、旧西町住民でつくる保存会が運営していたが、会員の高齢化や資金不足を理由に17年は中止になった。地区外の団体などから継続を願う声が出て、地元区や各団体などによる敦賀西町の綱引き伝承協議会が運営を引き継ぎ、18年に再開させた。

 しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るい、21年から再び中止に。協議会の会長は、前回18年に再開させた経験を基に「一度中止になった祭りを復活させるのは簡単ではない。今回は、前回よりも休止期間が長いため、地元の人たちの気持ちをどうやって盛り上げるかや、運営面などで当初は不安が大きかった」と打ち明ける。それでも会議を重ね、復活にこぎつけた。「ずっと続いてきた祭りなので、継続が決まって良かった」と話す。

 ■盛り上がりを期待

 例年、大綱作りは関係者や市内の中学生らが参加し、祭り会場沿いの駐車場で行ってきた。だが、今回は会場を大きな体育館に変更し、市内外から広く参加を呼びかけている。作るのは長さ約50メートル、直径約30センチ、重さ約500キロの大綱。

 協議会の事務局長は「大綱が出来上がる過程を知ってもらえば、祭りへの興味や関心がより高まる。今回、会場を変えたのは参加型の祭りをPRする一つの方法」と話す。

 例年300人ほどの見物客らが訪れる綱引き。会長は「敦賀を代表する祭り。みんなで綱を引いて、地元はもちろん市内全体で盛り上がりたい」と、多くの人を呼び込むことによる広がりに期待している。

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