• 山車が威勢よく巡行し、にぎやかに幕を開けた放生祭=14日、小浜市男山(杉本哲大撮影)
  • 神楽や山車が威勢よく巡行し、にぎやかに幕を開けた放生祭=14日、小浜市男山(杉本哲大撮影)
  • 「宵宮勢擶い」でまちの駅・旭座付近に山車や太鼓が集結し、舞などが奉納された放生祭=14日、小浜市広峰(杉本哲大撮影)
  • 大太鼓の鈴鹿区に助っ人として参加した(左から)岩井さん、内藤さん、松井さん=小浜市小浜鈴鹿
  • 大太鼓の鈴鹿区に助っ人として参加した(左から)岩井さん、内藤さん、松井さん=14日、小浜市小浜鈴鹿
  • 勇壮な立ち回りを奉納する大宮区の大太鼓と棒振り=14日、小浜市香取(杉本哲大撮影)
  • 獅子の男山区で初の女性笛方として参加した針田椎那さん(左)、結良さん姉妹=小浜市大手町
山車が威勢よく巡行し、にぎやかに幕を開けた放生祭=14日、小浜市男山(杉本哲大撮影)

 福井県若狭地方最大の秋祭り「放生(ほうぜ)祭」が9月14日、小浜市中心部の小浜地区で開幕した。山車(やま)や大太鼓などの「演(だ)し物」がかねや太鼓を打ち鳴らしながら、にぎやかに巡行し、まちを祭り一色に染め上げた。

 放生祭は同市男山の八幡神社の例大祭。380年余りの歴史があり、県無形民俗文化財に指定されている。同地区の24区が半数ずつ隔年で出番を務める。今年は山車(生玉、貴船、塩竃、竜田)、大太鼓(大原、大宮、鈴鹿)、神楽(鹿島、津島)、獅子(男山、多賀)、神輿(香取)の5つの演し物が各区の本陣などを巡る。

 八幡神社で神事が行われた後、午前9時ごろから続々と宮入り。神楽の鹿島区はかさをかぶり、黄色い衣装に身を包んだ住民らが厳かな雰囲気の中、笛の音を奉納した。

 各区の本陣の前では子供たちの元気で勇ましい獅子や大人たちの力強い大太鼓が披露された。この日の市内は最高気温35・6度の猛暑日。巡行中はこまめに休憩をとったりするなど、暑さ対策に腐心していた。

 午後4時には市まちの駅・旭座周辺で演し物が集結する「宵宮勢擶い」が行われ、祭りを大いに盛り上げた。

「宵宮勢擶い」壮大な光景、観客魅了

 放生祭最大の目玉「宵宮勢擶い」では出番区10区が小浜市まちの駅・旭座周辺に集い、演し物を披露した。華やかな山車(やま)や力強い大太鼓、勇ましい獅子などが集った豪華で壮大な光景に観衆は息を飲んだ。

 演し物の集結はこれまで2日目の昼に行われていたが、今年は暑さ対策として1日目にずらし、開始時間も午後4時に変更した。

 催しに先立ち、午後2時ごろからは同市広峰の鯖街道ミュージアム前で来年出番の今宮、清滝区がお囃子(はやし)を披露した。両区とも休みの年も練習する機会を設けており、息の合った太鼓など完成度の高いお囃子で祭りに花を添えた。

 午後4時15分ごろに全演し物がそろった。会場に設けられた八幡神社の御旅所の前で、同神社の宮司らが鹿島区の神楽に合わせ神事を行い、催しが始まった。その後は各区が順に演し物を披露し笛や太鼓、かねの音がまちに響いた。

 4区の山車はそれぞれがお囃子を行い、美しい笛の音色や子供らの元気なかけ声に加え、きらびやかな四つの山車が並ぶ光景が注目を集めた。市の事業「小浜Rキャンプ」で貴船区の山車の引き手として参加した京都橘大2年の岩田孟也さん(20)は「そろった時は感動した。各区のマークが入っていたり、それぞれの区で発展させてきた感じがしてすごくいい」と話していた。

 最後に大太鼓や山車による競演が行われ、観衆はくぎ付けになっていた。

助っ人高校生、大太鼓で盛り上げ

 大太鼓の鈴鹿区では、若狭高国際探究科2年生3人が区外から参加し、祭りを盛り上げた。

 参加したのは内藤さん、岩井さん、松井さん。探究活動で放生祭をテーマに取り組む内藤さんと岩井さんが7月に校内で祭りへの参加を呼びかけ、松井さんも参加することになった。

 少子化などで巡行が難しい区が出てきたことに寂しさを感じたことがきっかけ。同区大太鼓保存会の日下会長は「棒振りが人手不足だったので、高校生が参加してくれほっとした」と感謝する。

 演し物が同じく大太鼓の住吉区出身の内藤さんは太鼓、岩井さんと松井さんは棒振りを担当。駅前区出身の岩井さんは「前から出てみたいと思っていたのでとても楽しい」と話す。

 午後2時に本陣を出発した一行は、力強い太鼓の音と勇壮な棒振りを披露しながら巡行。内藤さんは「緊張したけど、徐々にスピードに乗ってたたくことができ楽しかった。人とのつながりを大切にする楽しい祭りにしていきたい」と話した。

針田さん姉妹、男山区初の女性笛方

 勇壮な演舞が特徴の獅子では、厳かで深みのある笛の音色も魅力の一つ。男山区では初の女性笛方となる姉妹が参加し演舞に花を添えた。

 参加したのは同区在住の針田椎那(しいな)さんと結良(ゆら)さん姉妹。子どものころは次女の希海(まひろ)さんを含む3人で舞方として祭りに参加していた。

 同区でも人口減などで笛方をする若い男性が舞方を務めるなど人手不足が課題。2人は「地域に根付いた祭りを大切にしたい」との思いで、中学生以来の参加を決意し、8月中旬ごろから稽古を始めた。

 宮入りの際に吹く「渡り拍子」「つくばい」や、巡行中に奏でる「道引」など5曲あり、特に宮入りでは計30分以上吹き続けることも。結良さんは「覚えるのも大変だし息が続かない」と話す。自宅でも過去の祭りの動画を見ながら自主練に励んできた。

 祭り当日、黄色の衣装に身を包んだ2人は「暑くて大変だけど、一生懸命練習した姿を見せれるように頑張る」と意気込み、笛を軽やかに奏でながらまちを練り歩いた。

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