• 筒形器台を模倣したとみられる朝顔形埴輪。胴部に台形、肩部に円形の穴が4つずつある(若狭町歴史文化課提供)
  • 若狭町にある西塚古墳の地図
筒形器台を模倣したとみられる朝顔形埴輪。胴部に台形、肩部に円形の穴が4つずつある(若狭町歴史文化課提供)

 福井県若狭町脇袋の国指定史跡「西塚古墳」から、須恵器の一種である筒形器台を模倣したとみられる朝顔形埴輪(はにわ)が出土したことが6月27日、町への取材で分かった。担当学芸員によると、筒形器台の特徴を持つ朝顔形埴輪の出土は全国で初めて。同町の古墳に詳しい高橋克壽・花園大教授は「当時、若狭地域は勢力が強く、大和政権に依存しない生産技術の独創性があったことを示す有意義な史料」と分析する。

 町が3月に発行した同古墳の発掘調査(2020~21年)に関する報告書に記録をまとめた。

 西塚古墳は古墳時代中期の築造とされ、4基ある脇袋古墳群の一つ。周濠(しゅうごう)のある前方後円墳で全長は74メートル。1935年に国指定史跡となった。町は同古墳の範囲確認を目的に、2020年10~12月に第1次、21年6~8月に第2次発掘調査を行った。今回の朝顔形埴輪は第2次調査で西側の前方部と後円部の境目付近から見つかった。最上部の口縁部から頸部(けいぶ)、肩部、胴部の最上段までが出土し、下部は見つからなかった。

 朝顔形埴輪は円筒状で上部がアサガオのように開いている。筒形器台はハの字型の土台に筒状の胴部が乗せられた形状。今回見つかった朝顔形埴輪は、胴部の各段に最大二つ円形の穴がある一般的な形状と異なり、胴部に台形、肩部に円形の穴が四つずつあり筒形器台の特徴を持っていた。

 出土したのは祭祀(さいし)が行われる場所だったため、特別な空間に仕立てるための装飾に使われていたと考えられるという。学芸員は「全国初の出土で西塚古墳の学術的価値が高まった。若狭地方の歴史解明につなげていきたい。地域の人たちには地元の古墳により誇りを持ってほしい」と期待した。

 鯖江市出身の考古学研究者で県文化財専門委員だった故斎藤優氏が1969年に行った発掘調査では、全体像の把握には至らなかったものの、今回の朝顔形埴輪と同様の頸部の破片が出土しており、複数作っていたと想定される。

 報告書は発掘調査報告編と脇袋古墳群の総括編で構成。若狭町立図書館などで閲覧できる。9~11月には町若狭三方縄文博物館で発掘調査の成果を紹介する特別展を行う。問い合わせは町歴史文化課=電話0770(45)2270。

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