1937年の昭和初期に創業し、後継者不在で2年間店を閉めていた福井県敦賀市元町の林豆腐店が「林とうふ」として5月に営業を再開した。前店主林さんのおい土山さんが「市民にずっと愛されてきた豆腐を作りたい」と事業の承継を決意。4代目店主として林さんのサポートを受けながら、伝統の味を守ろうと奮闘している。
林さんによると、市内には昭和30年代に22軒の豆腐店があったが、多くの店で後継者がいなくなり減少。「町の豆腐屋さん」と親しまれていた林さんの店も従業員の高齢化もあって2022年4月に店を畳んだ。林さんは「年齢的に体力が続かなかった。お客さんには申し訳ないし、自分も悔しかったけれど、やめることにした」と振り返る。告知の貼り紙を出し、閉店1週間前からは店前に100人以上の行列ができる日もあったという。
閉店後、常連客の惜しむ声を受け福井県事業承継・引継ぎ支援センターに依頼し後継者を公募した。希望者はいたが、林さんの思いと合致する人はいなかった。土山さんは昨年4月に「昔からずっと食べていた豆腐。自分が継げばまたみんなも食べられる」と名乗り出た。突然の申し出に驚いた林さんだが「話を聞くうちに本気と分かり、経営の承継を決めた」と語る。
営業再開に向け、機械をメンテナンスし、古くなったものは新調。床や壁など内装も全面的にリニューアルした。ただ、豆腐は元の味にこだわりたいと、今年4月から林さんに教わっている。店の看板商品は「絹とうふ」と油揚げの「きぬあげ」。きぬあげを買いに来た市内の女性は「閉店の話を聞いた時は本当にショックだった。子どものころから慣れ親しんだ味をもう一度食べられてうれしい」と喜んでいた。
店の復活で県内外から多くのお客さんが訪れてくれるといい、土山さんは「喜ぶ顔を見ていると、自分も頑張ろうという気持ちになる。100年、150年と続く豆腐店を目指したい」と話している。
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