原子力災害時に住民や外国人に分かりやすく避難行動の情報などを伝えるため、福井県と福井工大が協力し、原子力防災用のピクトグラムを作成した。「屋内退避」「避難所受付」「スクリーニング検査会場」など8種類。県によると、全国初の取り組みで「今後国に対して提案していきたい」としている。関西電力高浜原発を対象に20、21日に行う県原子力総合防災訓練の各会場で使用する。
ピクトグラムは情報や指示、案内を見た目で理解できるシンプルな図記号。県によると、津波や洪水、土石流などの災害用のピクトグラムは既に日本産業規格(JIS)で規定されているが、原子力災害のものはなかったという。
作成した8種類は▽屋内退避▽避難所受付▽避難バス待避所▽車両一時保管場所▽安定ヨウ素剤配布会場▽放射能汚染の有無を調べるスクリーニング検査会場―で、避難時などに住民が取るべき行動や会場の目印となる。緑色で統一し、放射能標識を配したものもある。図記号の下に内容を漢字と英語で併記した。
スクリーニング検査会場のピクトグラムは、車両の放射能汚染検査、人体の検査、放射性物質の付着が見つかった場合に拭き取る場所の3種類があり、避難住民をスムーズに誘導できる分かりやすい図案となっている。安定ヨウ素剤配布会場は、放射能が迫るときに1錠を口に含む様子をシンプルに表現している。
福井工大まちづくりデザインセンターが県からの受託研究として作成。原子力や都市デザイン、グラフィックデザインを専門とする同センター所属の教授3人が連携し、環境情報学部デザイン学科4年の学生がデザインを考案した。
福井市の同大福井キャンパスで17日、説明会があり、学生は「スクリーニングなど専門用語を表現するのは難しかったが、一般の人でも分かるよう意識した。地域の人がより安心できるように使ってほしい」と話した。
県原子力総合防災訓練は、高浜原発1号機の重大事故を想定して実施。県危機管理課によると、ピクトグラムは県内や京都府、兵庫県の避難先会場などで、看板計57枚に約40センチ四方で表示する。担当者は「原子力災害時により分かりやすく伝わるよう、国に提案したい」と話している。
(※福井新聞社提供。無断転載を禁止します。記事に関するお問い合わせは福井新聞社へ。)