福井県おおい町名田庄下の苅田比賣(ひめ)神社の秋季大祭が10月8日、同区で9年ぶりに営まれた。県無形民俗文化財「下村の獅子舞」や神楽太鼓の奉納、白塗りの顔に眉やひげを描いた「奴(やっこ)」らによる行列などを行い、集落の五穀豊穣(ごこくほうじょう)や子孫繁栄を祈願した。

 秋季大祭は5年に一度で当初は2019年に予定していたが、区内の事情と翌年からの新型コロナウイルス禍などにより延期されていた。今年は区民ら約60人が参加した。

 午前8時半ごろ、江戸時代の参勤交代を模した和服姿の行列があまご山会館を出発。鳥毛(とりげ)を持った奴が「これからお江戸へ何百里」「ああ三百里」と掛け声を上げ、後ろから笛を吹き鳴らす大人や獅子舞、子どもたちが引く神楽太鼓が続いた。

 区内を2キロほど歩いて神社に戻ると、舞殿(まいでん)の上で獅子舞を奉納。演者が一生に一度しか舞えないとされる「剣の舞」では、獅子が鬼門の邪気を刀で払う様を表現した。子どもたちによる神楽太鼓や奴踊りも披露され、区民が温かく見守っていた。

 同区の区長は「心待ちにしていた9年ぶりの開催で区民も喜んでいる。先人から受け継いだ伝統を次の世代につなげていきたい」と話していた。

(※福井新聞社提供。無断転載を禁止します。記事に関するお問い合わせは福井新聞社へ。)