福井県小浜市大原の正法寺に安置されている鎌倉時代とされる仏像「銅造如意輪観音半跏(はんか)像」(県指定文化財)が、奈良時代ごろに造られた可能性があることが大阪大大学院の藤岡教授(東洋美術史)の調査で分かった。奈良時代以前の文化財は市内でも数件しか残っておらず、「国指定」格上げへ住民らは意欲をみせている。
仏像は高さ57センチ、重さ36・4キロの小像。鎌倉時代ごろ、小浜の海に沈んでいた仏像を住民が拾い上げ、現在の仏谷集落の山にお堂を建てて奉安したとされる。
▽仏の表情が鋭く写実的▽裳の衣文がリアル▽指先の造型が巧み―といった外観的特徴から、鎌倉期の仏像として1977年に県指定を受けた。
日本全国で仏像調査を進める藤岡教授が、2018年と今年8月、正法寺を訪れ蛍光X線による仏像の成分分析を実施。銅が約95%、スズが約2%、ヒ素が約1%と飛鳥~奈良時代に国内で造られた仏像にみられる特徴的な数値が出た。鎌倉時代の仏像に含まれる鉛が検出されず「鎌倉の可能性は低い」(藤岡教授)と話す。
製造技法でも、仏像の内側の型の形状が飛鳥時代ごろの仏像と類似するものの、銅の厚みが薄く藤岡教授は「白鳳時代(飛鳥時代)の金剛仏の造り方を学び進歩した技術を持っていることから奈良時代のものではないか」と推測している。
調査結果を受け、同寺総代は「貴重な仏像を次世代まで守っていけるよう、国指定格上げを働きかけていきたい」としている。
調査結果は、本年度中に同大の研究誌で発表を予定している。
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