首長級の墓が密集する福井県若狭町脇袋の脇袋古墳群の一つである国指定史跡「上ノ塚古墳」について、周濠(しゅうごう)から延びる溝が開削されていたと花園大考古学研究室(京都市)が30日、発表した。同古墳に隣接する国指定史跡「西塚古墳」の周濠へ給水するために設けられた可能性があるという。

 上ノ塚古墳は若狭地方最大の前方後円墳で、被葬者は古墳時代の同地方の初代の王とされている。墳丘の長さは約100メートルで主軸は南北方向。4基ある脇袋古墳群の中で最も古い5世紀初め(古墳時代中期)の造営とされる。表面に葺石(ふきいし)と埴輪(はにわ)を備えていた。

 同研究室は本年度から始めた「音波探査法を用いた古墳の周濠の復元的研究」の一環で、8月21日から上ノ塚古墳で調査を開始。周濠の北西角と推定され、西塚古墳に最も近い地点の約45平方メートルを調べた。

 見つかった溝は長さ約6メートルで、周濠外側にある周堤に、西塚古墳へ向かって周濠の底面近くまで開削されていた。脇袋は東側に膳部山がそびえる緩やかな傾斜地で、上ノ塚古墳は西塚古墳より山側にある。調査している高橋教授によると、山の水はまず上ノ塚古墳の周濠に注がれ、5世紀後半の西塚古墳造営時に溝を掘り、給水したと考えられるという。

 高橋教授は「王墓から王墓への給水のために使われていたとすれば、全国的にも例のない発見。被葬者同士の王位の継承性を示すものといえる。他に隣接する糠塚古墳も含め、三つの古墳同士で同様の水のつながりがあると推測され、今後解明したい」と話していた。

 調査ではこのほか、古墳の範囲特定につながる周堤西の内側斜面の一部が見つかった。今回の調査の現地説明会が2日午前10時~同11時に開かれる。申し込み不要。

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