「組立地蔵小屋」でかねや太鼓をたたいて参拝を呼び掛ける子どもたち=2017年、小浜市小松原川西

 福井県小浜市で8月23日に営まれる子どもが主役の伝統行事「地蔵盆」が、少子化や高齢化を背景に徐々に様変わりしている。市内でも盛んといわれる西津地区では、化粧地蔵をまつる地蔵盆専用に設営する「組立地蔵小屋」が住民の高齢化などで今年姿を消すことになった。子どもがほとんどいなくなったところもあり、やり方を変えるなど知恵を絞って伝統を守り継いでいる。

 地蔵盆は若狭地方各地で行われる伝統行事。同市西津地区では中学2年生までの子どもが参加。前の年の地蔵盆で化粧した地蔵を洗い清め、新しく絵の具などで“化粧直し”して準備する。地蔵盆当日は、地区内二十数カ所の各会館や組立地蔵小屋に化粧地蔵をまつる。

 住民らによると、約50年前にはいくつもの町で組立地蔵小屋があったが徐々に減ってきたという。新型コロナ禍前の2019年には設営したのは2町のみ。今年は組み立て作業を行う住民の高齢化や人員不足、小屋の老朽化などで断念し、会館やガレージに移行する。

 組立地蔵小屋にササや五色旗が飾られ、子どもが太鼓やかねを鳴らし、訪れた人たちに参拝を促す様子は、風物詩として親しまれていただけに「文化的価値も感じていた。さみしい」という住民の声も。50代の住民からは「小屋がなくなるのは惜しいが、住民負担を考えると仕方がないのでは」という声が聞かれた。

 子どもの数も一部を除き減少している。地区によると、地蔵盆を担う中学2年以下の生徒・児童数は、新小松原、下竹原の2区内16町のうち11町でゼロに。一方、小湊区では住宅地造成で100人を超す子どもがいるなど地域間で格差が拡大している。

 地蔵の化粧直しの様子も変化。30年前によく見られた海で地蔵の色を落とす姿は珍しく、現在は水道水を使うことが一般的になった。子どもが少ない地域では、毎年の化粧直しをしないところもある。

 同地区では2年前から、地蔵盆継承へ向けて地蔵巡りを楽しめるイベントに取り組んでいるほか、市無形民俗文化財への指定を目指す動きもある。

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