
敦賀市阿曽の敦賀湾の海水を使って作られ、販売されている「角鹿(つぬが)の塩」が、日本書紀の記述を由来に「呪いをかけ忘れた塩」としてSNS(交流サイト)で取り上げられ、注目を集めている。リポスト数は3万2千件以上に上り、手掛ける津田伊右衛門(同市公文名)のネット売り上げは約30倍に伸びている。
敦賀は、古墳時代の製塩遺跡が見つかるなど日本海側有数の塩の産地だった。日本書紀には、かつて天皇になろうとした有力者が滅ぼされる時、あらゆる塩に呪いをかけたが、角鹿(現在の敦賀)の塩にはかけ忘れた。そのため唯一、天皇の食料として敦賀で作られた塩が選ばれた―などとある。
商品の「角鹿の塩」は、かつて盛んに塩が作られていた歴史を知ってもらおうと、食塩製造販売の津田伊右衛門が2022年に商品化。作業の一部を市内の障害者福祉サービス「LABwel(ラボウェル)」に委託し、丹精込めて手作りしている。ミネラル分が高く、まろやかな味が特徴という。
SNSのX(旧ツイッター)には3月2日、「すみませんが、皆さんの使っている塩は呪われています」という文章と商品説明の画像が投稿された。ネット上には「知らなかった」「角鹿の塩すげぇ!」「日本書紀で思わず確認してみました」と感心する声や、「(ほかの塩を食べていた)自分の高血圧は呪いだったのか」「縁起物として売り出せる」など面白がるコメントであふれた。
ネットでの注文が殺到し3月の出荷量は、投稿前の2月と比べて急増し、売り上げも増えた。商品を扱う敦賀駅併設のオルパーク内の販売所でも3月はボトルタイプの商品が前月比4・5倍の90個売れたという。担当者は「場所がら観光客が買い求めることが多かった」と話す。
津田伊右衛門の担当者は「私たちの塩に思わぬ幸運が舞い込んできた。敦賀の海の恵みや歴史が詰まっている。ロマンあるストーリーに思いをはせながら味わってほしい」と話している。
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