別司芳子さんの「恐竜博物館のひみつ」

 福井県敦賀市の児童文学作家、別司さんがこのほど、児童書「恐竜博物館のひみつ」を刊行した。夜になるとさまざまな化石が動き出す博物館を舞台に、カメ専門の研究員と恐竜好きの小学生が交流を深めていくストーリー。化石研究のわくわくや、子どもたちの心の変化を描きながら「命のつながり」や「多様性」の大切さを伝えている。

 ある日の夜、博物館の研究員が足元にある石にぶつかった。それが実は動くカメの化石で、しかも会話ができるという場面から物語は始まる。異なる時代に生きたアロサウルスとティラノサウルスがいがみ合うなど、恐竜化石たちも動き出す。そんな博物館で研究員と仲良くなった小学生の博文は、母親が外国人であることに悩んでいて―。

 福井県立恐竜博物館の協力で取材に6年かけ、化石研究や発掘体験の描写はリアル。夜の博物館の表現は参加したナイトツアーが基になり「私たち人間が恐竜化石に見られている感覚で、迫力満点。今にも動き出しそうだった」という。

 博文の悩みは国際化が進んだ現在、身近なものかもしれない。別司さんは恐竜博物館で「命のつながり」を感じたといい「偏見、戦争がなくなってほしい」との思いを込めた。研究員の専門を恐竜ではなく、カメにしたのも「多様性の大切さを感じてほしいから。子どもたちには、自分の好きなものを追求していってほしい」と話していた。

 文研出版刊、1650円。

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