福井県小浜市の箸メーカーのマツ勘(北塩屋)は、明治期まで使われていた若狭塗の伝統的模様「抜き模様」を再現した若狭塗箸「rankak」(らんかく)を商品化した。職人が鮮やかな色漆と白い卵殻で表現した繊細な模様が特徴で、同社の松本社長は「若狭塗の表現やデザイン性の面白さを現代に伝えていきたい」と話し、今後も古典的な模様の商品復活を目指したいという。
抜き模様は国の伝統的工芸品に指定されている若狭塗の一種。色漆を塗った木地に植物の葉などの素材を置いて卵殻をまき、乾燥させた後に素材を取り除き漆を塗り重ね研いで完成させる。素材を置いた部分だけ卵殻が付かず、模様として浮かび上がってくる。
若狭塗は明治期には200以上の模様があったが、現在は数種類ほどしか使われていない。抜き模様も時代の変化とともに徐々に使われなくなったという。
同社は昨年1月に若狭塗の歴史などを紹介するミュージアムを併設した「GOSHOEN」(北塩屋)を全面オープン。施設整備の過程で若狭塗について調査を進め、伝統的な塗りの技術を現代に残していこうと商品開発を企画。2年以上の試作期間を経て、商品化した。
箸の木地には江戸時代に使われていた伝統的な材料である竹を使用。赤、緑、黄、黒の4色展開で赤は糸、緑はマツの葉、黄色は菜種と抜き模様に使う素材も異なる。黒は卵殻をまぶし、グラデーションをつけることで雪が降っているような模様に仕上がっている。抜き模様が施されていない部分にも貝を埋め込んで研ぎ出すことで、キラキラとした美しい見た目に仕上がっている。
塗りは小浜市内に工房を持つ職人の古川さんが担当した。古川さんは「試作では模様がはっきり出なかったり、苦労した部分もあったが、新しい発見もあり、プラスになった」と振り返る。
同社は今後、他の模様の商品化も検討している。松本社長は「調査で若狭塗の魅力がどんどん見つかった。塗り箸メーカーとして模様の面白さを伝えていく義務がある」と力を込めた。
各種100膳ずつ。GOSHOENやオンラインショップで1万6500円で販売。全国の百貨店などでもオープン価格で販売する。
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