福井県小浜市のブランド養殖魚「小浜よっぱらいサバ」が出荷停止となり約1年。サバの安定供給へ向け田烏水産(田烏)などは、卵から人工的にふ化させ育てる完全養殖技術の研究を進めている。人工的だった採卵方法を本来の生殖活動に合わせる「自然採卵」を導入することでサバの成長速度が上昇。猛暑による海水温上昇でも3割以上の生存率に上昇した。横山社長は「予想以上の結果」と手応えを感じている。
小浜よっぱらいサバは猛暑で昨夏、飼育の9割に相当する約3190匹のサバが死んだ。種苗不足の影響も重なり出荷再開には至っていない。
世界的な海水温上昇が課題となる中、横山社長らは昨年12月、水産業の産学官研究を主導する会社「わかさかな」を設立。今年4月から高温に強いサバの品種や育成期間短縮などを研究する「さばイバル・プロジェクト」をスタートした。
サバの完全養殖の研究はプロジェクト開始以前から県内で行われてきたが、投薬で人工的に卵や精子を出し、受精させる「人工採卵」だった。親サバへの負担が大きいことから、プロジェクトでは自然に卵を産み、受精するのを待つ「自然採卵」に転換。受精卵を回収するため監視する時間が増える一方、ふ化率は高かったという。
また生まれたサバは成長スピードが速く平均7グラム(7月時点)が3カ月ほどで82グラムほどまで成長。餌の食いつきもよく「普通より3倍ほど」(横山社長)の成長速度という。高温耐性でも成果が出ている。今夏は水温が30度以上の状態が1カ月ほど続くなど昨年以上の厳しさの中でも約4000匹のうち1500匹(9月末時点)ほどが生き残った。
今回生き残ったサバで養殖を重ね来春ごろの試験販売を計画している。横山社長は「研究はまだ1年目。ビギナーズラックの可能性もあり、再現性を高めていく」と話している。
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