• 移築された旧鰊蔵。水戸天狗党の志士らが幽閉されていた
  • 水戸天狗党の歴史に関する解説パネルを備えたガイダンス施設前でテープカットする関係者=10日、敦賀市松島町2丁目
移築された旧鰊蔵。水戸天狗党の志士らが幽閉されていた

 幕末に敦賀で非業の死を遂げた水戸天狗(てんぐ)党の志士らの墓がある国史跡「武田耕雲斎等墓」(敦賀市松島町2丁目)の整備事業が完了し10月10日、現地で記念式典が開かれた。志士が幽閉された旧鰊蔵(にしんぐら)(水戸烈士記念館)が近くの松原神社から移築されたほか、解説パネルを備えたガイダンス施設が新設された。慰霊や顕彰活動を後世につなぐとともに史跡への来訪者増を目指す。

 旧鰊蔵は、北前船で敦賀に運ばれたニシンの倉庫として今の蓬莱町にあった。1954年、敦賀港修繕に伴い壊される計画だったが、存続を望む声で16棟のうち1棟を松原神社に移築。市民有志による敦賀水戸烈士遺徳顕彰会が長年管理し、2019年に市に寄贈した。

 旧鰊蔵の老朽化などに伴い、2019年度から史跡の整備事業を進めてきた。ガイダンス施設は天狗党と敦賀のつながりに関する解説パネルやトイレ、雨天時の待避場所を備えている。旧鰊蔵は天狗党が幽閉された幕末の姿に復元するため、壁にあった窓を撤去し、江戸時代の絵図に描かれた外観を再現した。事業費は約2億2千万円。

 式典には天狗党の歴史を縁に敦賀市と姉妹都市関係を結ぶ水戸市のほか、茨城県常陸太田市、潮来市の関係者、敦賀水戸烈士遺徳顕彰会のメンバーらが出席した。

 敦賀市の米澤光治市長は「幕末の悲劇の舞台であるこの史跡について、多くの方々に知っていただき、関係する皆さんとの交流の歴史を再認識し、継承していきたい」とあいさつ。水戸市の高橋靖市長は「水戸烈士を顕彰、研究していただく施設ができたことは水戸市民としても喜ばしく誇りだ」と述べた。常陸太田市の宮田達夫市長、潮来市の原浩道市長もあいさつに立ち、交流継続を誓った。

 鰊蔵は市文化財であり、見学対応の係員を常駐させることも難しいため普段は内部非公開だが、観光ボランティアガイドによる解説会などを随時実施していく。

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