• 「鯖街道」が日本遺産の特別重点支援地域に選定され、くす玉を割って喜ぶ市民ら=23日、小浜市和久里の道の駅「若狭おばま」(山崎彩撮影)
  • サバを運んだ行商人になりきり買い物を体験してもらうなど、鯖街道に親しんでもらう工夫を凝らした道の駅「若狭おばま」の売り場=23日、小浜市和久里(山崎彩撮影)
「鯖街道」が日本遺産の特別重点支援地域に選定され、くす玉を割って喜ぶ市民ら=23日、小浜市和久里の道の駅「若狭おばま」(山崎彩撮影)

 文化庁は7月23日、福井県若狭の海産物を京都に運んだ鯖街道を中心とする小浜市と若狭町の日本遺産「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国(みけつくに)若狭と鯖街道~」を、「特別重点支援地域(日本遺産プレミアム)」に全国で初めて選定したと発表した。「日本遺産が目指すべきモデル」として新たに設けられた最上位の枠組みで、選定は全国唯一。今後、文化庁による普及啓発や情報発信で積極的に取り上げられる。

「鯖街道」が日本遺産の特別重点支援地域に選定され、くす玉を割って喜ぶ市民ら=23日、小浜市和久里の道の駅「若狭おばま」(山崎彩撮影)

 「鯖街道」は2015年度に、地域の文化財を組み合わせて観光振興につなげる日本遺産の第1弾の一つに認定された。評価制度が導入された21年度には他の地域のモデルとなる「重点支援地域」に選ばれた。

 新設のプレミアムは、重点支援地域の中でも特に優れた地域に対し、予算や手続き面で厚遇する。「鯖街道」は▽地域総がかりで取り組み、観光の拠点化や商品開発など多くの成果を上げている▽文化資源を生かした地域経済の再生や、文化財の保存・活用の好循環創出など地域活性化のモデルになり得る―などと高く評価された。

 15、18年度に日本遺産に認定された30件が対象となった今回の審査で、重点支援地域4件のうち「鯖街道」のみがプレミアムに選定され、他の3件は重点支援地域からも外れた。

 小浜市・若狭町日本遺産活用推進協議会によると、「鯖街道」は文化庁の日本遺産に関する事業で優先的に情報発信される見込み。協議会の担当者は「海外の旅行会社へのPRなどで『鯖街道』を取り上げてもらえると期待している」としている。地元事業に対する補助率も一層のかさ上げが見込まれ、今後の継続審査時には提出資料の簡素化なども検討されるという。

 鯖街道は重点支援地域の選定後、多言語音声ガイドの導入などを進め、両市町の23年の外国人宿泊者数は計約1万1千人となり、新型コロナウイルス禍前の19年の1・5倍以上に増えた。国の重要伝統的建造物群保存地区の熊川宿(若狭町)などでは、古民家を一棟貸しホテルや観光拠点として活用している。

 「鯖街道」以外の29件の審査結果では、新たに2件が重点支援地域に選ばれ、18件が認定継続となった。5件は継続判断を保留し「再審査」となり、残る4件は点数評価の対象とし、新規候補1件との入れ替えも含めて検討される。

「鯖街道 地域の誇り」、誘客や普及啓発へ弾みに

サバを運んだ行商人になりきり買い物を体験してもらうなど、鯖街道に親しんでもらう工夫を凝らした道の駅「若狭おばま」の売り場=23日、小浜市和久里(山崎彩撮影)

 観光誘客や地域活性化の弾みに―。日本遺産「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群」が特別重点支援地域(日本遺産プレミアム)に選定された7月23日、御食国(みけつくに)の食材を運んだ鯖街道の起点の小浜市と、代表的宿場町「熊川宿」がある若狭町は喜びに包まれた。民間主導の組織運営などが評価され、関係者は「たくさんの人が鯖街道を誇りに思い活動してきた結果」と受け止め、さらに取り組みを加速させる決意を示した。

 2015年の日本遺産認定以降、両市町は日本遺産を生かした観光誘客や構成文化財の活用などに取り組んできた。

 小浜市は、3小学校の児童が鯖街道を歩く「踏破体験」を行っているほか、民間団体も体験ウオーキングを企画。多くの人が歴史や風景に触れる機会の創出につなげてきた。昨年3月にリニューアルした道の駅「若狭おばま」(同市和久里)は、「鯖街道ワンダーランド」をコンセプトに売り場づくりを展開。背負い籠と笠(かさ)を身に着ける行商人体験や、巨大なサバののれん、サバ缶ディスプレーなど数々の仕掛けを施した。

 同道の駅の23年度の年間売り上げは、前年度比約1億3千万円増の約2億8千万円と大幅に伸びた。運営する市第三セクター「まちづくり小浜」の御子柴社長は「鯖街道の世界を体験してほしいとの狙いで店づくりをしてきた。外国人客も増え魅力が伝わっている」と手応えを口にする。

 若狭町の熊川宿でも案内看板や駐車場、多言語ホームページなどを整備し、空き家の活用も進む。熊川宿で1棟貸しの古民家宿「八百熊川」を運営するデキタの時岡社長は「プレミアムへの選定が民間の取り組みの追い風になるとありがたい」と期待。若狭熊川宿まちづくり特別委員会の宮本哲男会長は「行政や民間事業者、地元住民が一丸となり、活性化の取り組みを続けたことが選定につながった」と胸を張った。

 23日は小浜市の同道の駅で記念式典があり、若狭町の渡辺英朗町長ら150人が出席し、くす玉を割って祝った。渡辺町長は「鯖街道の価値を高め、地域のブランド力をしっかりと向上させていく。地域活性化や産業の発展、観光振興などを皆さんと一緒にどんどん実現していきたい」と強調した。

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