市指定文化財に追加された若狭塗見本手板を構成する塗本(下)とわかさぬ里本=11日、小浜市北塩屋のGOSHOEN

 福井県小浜市は国の伝統的工芸品に指定されている若狭塗で、塗りの見本板と技法を記した書籍など5点で構成する「若狭塗見本手板」を4月10日付で、市指定文化財に追加した。江戸時代から続く高度で多様な技術を知ることができる貴重な資料。今回の指定で市文化財は116件となり、国68件、県83件と合わせて267件となった。

 若狭塗は漆を塗った木地に貝殻や卵の殻をちりばめ、漆を塗り重ねて研ぐ「研ぎ出し」が特徴。江戸時代初期に小浜藩の塗師松浦三十郎が海底から着想を得てデザインをしたのが始まりとされ、藩の庇護(ひご)を受けた。特に江戸時代後期から多くの技法が生まれたとされ、明治時代には211の技法があったという。

 見本手板は職人が塗りの技術を学んだり、顧客に見せるサンプルなどとして使われていたと見られる。今回の資料は▽塗本(個人蔵)▽古代若狭塗標本(同)▽若狭塗見本額(同)▽わかさぬ里(り)本(マツ勘蔵)-の4点と補足資料として鞘塗見本手板(個人蔵)1点で構成する。

 塗本は江戸時代後期に作られたとされる現存最古の見本手板。縦6・4センチ、横27・5センチの10枚の板の両面にそれぞれ4~5の模様が塗られ、計76の技法を伝えている。わかさぬ里本は明治期に作られた縦24・5センチ、横17センチの書籍。211の技法の名称や使用する素材、塗る順番などが詳細に記されている。

 市は2年ほど前から職人らと協力して調査を進めてきた。異なる工房の見本手板でも模様や技法名で共通する部分が多く、市担当者は「地域で若狭塗の技法がある程度共有されていたことが分かる」と強調する。また現在では使われていない技法も確認され、担当者は「文化財を通じて若狭塗の魅力を伝えることで、新しい商品の開発や若い人材の獲得などにつながれば」と話した。

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