• 今年の南川には足場が一つもみられない=14日、小浜市城内1丁目
  • 南川で取れたイサザ=昨年3月
今年の南川には足場が一つもみられない=14日、小浜市城内1丁目

 福井県小浜市の南川に足場を組み遡上(そじょう)するイサザを採る「イサザ漁」が今年は姿を消した。小浜の春の風物詩として親しまれてきたが、漁獲量が近年大幅に減少し漁師の高齢化も進む。地元組合では市民を巻き込んだイサザの生態調査などに意欲を示し「和気あいあいとイサザ漁ができるようにできれば」と話している。

 イサザは体長5センチほどのハゼ科の半透明の魚。標準和名はシロウオ。3~4月に繁殖のため川を遡上するため、川岸に足場を組み、先端に筒状の網が付いた竹ざおを川に入れイサザを取る。

 市イサザ採捕組合によると、南川では40年ほど前からイサザを取るための足場が並び、多いときで100を超える足場が並んだという。その後、組合員数は徐々に減少。現在は8人となり、うち7人が70歳以上と高齢化が進む。近年では組合員1人が漁を続けていたが、今年は体調を考え断念した。組合長を務める松井さんは「あくまで自分が楽しかったからこそ続けられていたのもあるだろうし、しょうがない」と肩を落とす。

 漁獲量の減少も深刻だ。環境省の絶滅危惧Ⅱ類に指定され南川ではかつてシーズン中に1人当たり約18キロの漁獲量があったが、近年は約300グラムほどに激減している。河川改修により産卵場が減ったことなどが要因といわれている。

 課題解決に向け農学博士でもある松井さんが着目するのがイサザの生態調査だ。特に海での生態が分かっておらず、松井さんは「生活する場所が分かれば、そこを保全することでイサザがすみやすくなる」と話す。市民参加型の調査も視野に「イサザ保全の機運醸成につながれば」と語る。

 またイサザ漁を知ってもらおうと市内小学校などでの特別授業にも意欲を示している。

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