• 試験販売を受け生食として提供されるマガキ=小浜市の若狭フィッシャーマンズ・ワーフの海幸苑
  • 試験販売へシングルシード養殖されるマガキ=小浜市仏谷
試験販売を受け生食として提供されるマガキ=小浜市の若狭フィッシャーマンズ・ワーフの海幸苑

 福井県小浜市漁協、県立大などが連携し小浜湾で養殖しているマガキの事業者向けの試験販売が今月から始まり、市内飲食店で生食メニューとして提供されている。1年未満というスピード養殖の上、高い海水温でも安定した生産が可能な新たな種苗による「小浜湾産マガキ」としてブランド化、販路拡大を目指す。

 水深が浅く高水温になりやすい小浜湾では、養殖カキの斃死(へいし)が課題。安定した養殖マガキの開発に取り組もうと、県立大海洋生物資源学部が広島県から取り寄せた、高水温に強い種苗の提供を受け、昨年5月から養殖を始め試験販売にこぎつけた。

 海中での生育を妨げる不要物が付着しない利点がある専用かごを使った「シングルシード方式」を採用し養殖。通常2~3年かかるカキの養殖だが、1年未満という短期養殖を実現した。また昨夏は記録的高温だったが、今年3月時点の生残率は95%を超え高温に強い特性も実証された。

 マガキは一見小ぶりだが、殻の中にはぎっしり身が詰まり、口にいれると、ミルキーで濃厚な味が広がる。また、種苗は年中出荷が可能な強みも備えている。同漁協では、生食用として出荷するため、カキに含まれる菌や不純物を取り除くための滅菌装置を本年度導入。市内のレストランや居酒屋など4店舗に試験販売し各店では生食として提供している。店舗によっては4月中も取り扱う。

 同漁協組合員は「安定して供給できるところまでこぎつけられた。小浜の海で育ったぶりぶり身のカキを食べてほしい」と話した。

 同漁協では11月ごろの本格出荷へ本年度の種苗数の10倍となる3万個を養殖し、本格販売に向けた準備を進める。並行して養殖技術の確立を急ぐ小浜湾内で採取した種苗を使った“純小浜産”マガキ養殖と合わせ「小浜湾産マガキ」としてブランド化していきたい考え。

 試験販売先の提供店舗一覧は同漁協ホームページから。

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