• ポーランド政府から贈られた勲章と郷土人形を米澤市長(左)に寄贈する中村さん夫妻=21日、敦賀市役所
  • 敦賀市に寄贈された勲章と郷土人形
  • ポーランド政府から贈られた勲章と郷土人形を米澤市長(左)に寄贈し、歓談する中村さん夫妻と北出さん=21日、敦賀市役所
  • ポーランド政府から贈られた勲章と郷土人形を米澤市長(右)に寄贈する中村さん夫妻=21日、敦賀市役所
ポーランド政府から贈られた勲章と郷土人形を米澤市長(左)に寄贈する中村さん夫妻=21日、敦賀市役所

 ロシア革命に伴う動乱でシベリアに取り残されたポーランド人孤児の救出に尽力した当時の日赤副社長で元福井県知事、阪本釤之助(さんのすけ)さん(1857~1936年)の孫が3月21日、ポーランド政府から贈られた勲章を、孤児が日本で最初に降り立った敦賀市に寄贈した。ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区で戦闘が続く中、孫の女性は「世界的に大変な時代に、善意や好意の素晴らしさが敦賀から世界に伝われば」と語った。

 ポーランドは、ロシア革命後の1918年に独立を回復したが、革命による内戦の混乱でシベリアにいたポーランド人は故郷に帰れず、親を失い、飢餓に苦しむ子どもも多かった。現地支援団体の依頼を受けた日本が救済に乗り出し、日赤の協力で計約760人が敦賀港に到着。敦賀の住民からおもちゃや菓子、寄付金が贈られるなど温かい手が差し伸べられ、東京や大阪で一時療養後に帰国した。

 阪本さんは現在の愛知県に生まれ、内務官僚などを経て、1902年から07年まで福井県知事を務めた。鹿児島県知事や名古屋市長を務めた後、日赤副社長に就き、ポーランド人孤児の救出に尽力。1923年ごろにポーランド政府から勲章が贈られた。

 阪本さんの孫、中村さんは敦賀とポーランドの歴史的つながりを踏まえ、ユダヤ難民らの足跡を調査しているフリーライター北出さんの仲介もあり、市に勲章を寄贈すると決め、夫と21日に市役所を訪れた。

 中村さんは「ポーランドの方々はもちろん苦労されただろうが、敦賀の皆さんも本当に努力されたのだろうと思う」とし、「歴史の一部として皆さんに(勲章を)見ていただけるなら、祖父も喜んでいるのではないか」と語った。勲章とともに、ポーランド政府から阪本さんの娘に贈られた同国の郷土人形も贈呈した。

 市は、勲章と人形について、ポーランド孤児やユダヤ難民の歴史に関する資料館「人道の港敦賀ムゼウム」で近く展示を始める。米澤光治市長は「ポーランド孤児に関するエピソードの背景や日本が果たした役割について、より理解が深まる。多くの人に見ていただきたい」と語った。

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