• 寒さに耐えながら綱を引きちぎる男衆=21日、美浜町日向
  • 見物客が見守る中、日向橋から運河に飛び込む男衆
寒さに耐えながら綱を引きちぎる男衆=21日、美浜町日向

 福井県美浜町日向で400年近く続く国選択無形民俗文化財「水中綱引き」が21日、同区の運河で行われた。寒空の下、鉢巻き姿の男衆が橋から飛び込んで大綱を豪快に引きちぎり、1年の豊漁と海の安全を祈った。

 水中綱引きの由来には諸説あるが、1635年に小浜藩主・酒井忠勝が村の願いを受けて日向湖と若狭湾を結ぶ運河を開削し、完成を村人が祝ったのが始まりとされる。また、運河に現れた大蛇を退治しようと大綱を張ったという故事に基づくとの説もある。

 午前6時、近くの稲荷神社に男衆が集合し、3時間ほどかけて直径約30センチ、長さ約40メートルの大綱を編み上げた。

 午後2時過ぎ、白いパンツと鉢巻き姿の男衆11人が運河に架かる日向橋の上に登場。運河に飾られた大漁旗が強風で大きくなびく中、叫び声を上げて次々に運河に飛び込んだ。

 男衆は東西両岸につながれた綱を冷たい水の中で「よいしょー」と掛け声とともに引っ張り、5分ほどで引きちぎった。

 橋の上や両岸は多くの見物客で埋まった。男衆が飛び込んだり、大綱を引き合ったりする度に喚声が上がり、漁師町ならではの勇壮な年始めの行事を楽しんだ。

 日向青年会の会長は「今季はブリが大漁で、今後も豊漁が続いてほしいと願った。区内の若者は減っているが、この伝統行事はこれからもしっかりと守り続けたい」と話した。

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