次々と樽上げされるへしこ=18日、美浜町日向

 福井県美浜町特産「へしこ」の樽(たる)上げがシーズンを迎えている。1年間じっくり漬け込まれうまみはたっぷりで、コク深い仕上がり。同町日向のへしこ小屋「日向へしこ酵房日の出屋」では12月18日、代表の加藤さんらが一本一本樽から取り出し、袋詰めする作業に励んだ。

 江戸時代の中頃から作られてきたというへしこは、サバを秘伝の調味料やぬかとともに樽に入れ、1年間漬け込む若狭伝統の保存食。同町では昔からサバを塩漬けした後、調味料を加え本漬けする製法が主流で、マイルドな味が特徴という。

 海水湖である日向湖沿いにある日の出屋はかつては船小屋だった。夏は暑く、冬は冷たい潮風が吹き込むため、身が引き締まり、風味豊かになるという。10月ごろから今季の本格的な樽上げを始めた。

 この日は、加藤さんと手伝いに来た区内の女性の2人が、今年1月に漬けた樽一つ分の約90本を取り出した。腹にたっぷりぬかを詰め込んだ後、形を整えて袋に詰め、真空状態にしていった。敦賀市内の魚問屋や美浜町の道の駅「若狭美浜はまびより」に出荷する。

 「我が子を育てるように丹精込めて漬けたへしこがおいしく仕上がっているのを確認できるのが一番の喜び」と加藤さん。ご飯にもパスタにも合うとし、「美浜町内でも作る人によってこだわりがあるので、味の違いを食べ比べて楽しんでほしい」と話していた。

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