日本の文化振興や海外発信などに貢献した人をたたえる本年度の文化庁長官表彰に福井県敦賀市の昆布専門店「奥井海生堂」社長、奥井隆さんが選ばれた。伝統の「蔵囲(くらがこい)」による昆布の品質向上や、昆布だしの「うまみ」を子どもたちや世界に発信し、和食文化の振興に尽くしたと評価された。
奥井さんは、1871年創業で、北前船で敦賀港に運ばれた北海道の昆布を扱う同社の4代目。質のいい昆布を目利きし、蔵で熟成させる「蔵囲」は「夏に北海道で採れた昆布が北前船で敦賀に着き、一冬越して桜の散るころに出荷すると香りが変化し、おいしさも増すことを見つけた、敦賀の歴史、文化」と話す。戦時中に蔵は焼け落ちたが、40年ほど前に復活させた。同社には1989年から熟成している“ビンテージ”も保管されている。
一般社団法人「和食文化国民会議」理事も務める。同会議は、和食が2013年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことから、幼稚園や小中高校で出前講座を開いており、奥井さんは講師として活躍。子どもたちに昆布だしを試飲してもらうと「『おいしい、おいしい』と喜んでくれて。ありがたいね」と柔和な笑みを浮かべる。
パリやニューヨーク、バンコクなどでも、和食やうまみについて講演し昆布を世界に発信。イタリア料理シェフによる昆布とバルサミコ酢を組み合わせた調味料「コブサミコ」の開発にも関わった。
奥井さんは「和食は文化遺産と認められてブームが広がっているが、根本にあるのが昆布だしのうまみ。昆布なしでは和食は語れない」と話す。「敦賀港が活性化した一つに昆布がある。受賞をはげみに敦賀の昆布を次世代、そして世界に向けて発信していきたい」と力を込めた。
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