• 図録「一筆 自己彩展」を手にする岸本さん=10日、小浜市の県立若狭図書学習センター
  • 岸本さんの約130点の作品を展示した個展=10日、小浜市の県立若狭図書学習センター
図録「一筆 自己彩展」を手にする岸本さん=10日、小浜市の県立若狭図書学習センター

 福井県小浜市泊の書家、岸本一筆さんは自身と書の関係を記した図録「一筆 自己彩展」を発刊した。これまで手掛けた作品が、その時々、どんな思いを経てできたのか制作過程をたどる異色の図録。古希を控え「自分の書を自己採点し区切りとし、新しいところへ向かいたい」(岸本さん)と意欲を語っている。

 岸本さんは東京学芸大書道科を卒業。県立高教諭の傍らグループ展などに出品してきた。個展も10回ほど開き、市内で書道教室「筆塾」も開くなど精力的に創作活動を続けている。

 図録は古希を前に、自分が手掛けた作品を見つめ直し次に進むために自己採点しようと個展に合わせ制作した。

 図録では20代からの47作品を取り上げ、作品として選んだ言葉や文字への思いをつづっている。最古の文字「甲骨文」から書き起こした「山」では、書の線に直線的な鋭さを必要と感じていたころに甲骨文に出会い、試行錯誤した様を登山に例え書き記している。

 また禅における書画の一つで丸を一筆で描く「円相」に30歳で挑戦した際の思いや、岸本さんの書に頻繁に登場する象形文字「魚」は、海のように寛容でありたいという思いを持ち、若狭の海で育つ魚と、海辺で育った自身を投映した「私の肖像」(岸本さん)としている。

 岸本さんは「自分が今どこにいるのか、向かう方向性がそれでいいのか点検し、全く違う発想で新しいものを追求したい」と話している。

 A4判、63ページ。500部を製作、希望者には無料で配布する。

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