• 開館25周年を迎えた県海浜自然センター。「ふしぎな水そう」などで豊かな自然を発信している=若狭町世久見
  • 海藻の標本作りに取り組む親子連れ
開館25周年を迎えた県海浜自然センター。「ふしぎな水そう」などで豊かな自然を発信している=若狭町世久見
開館25周年を迎えた県海浜自然センター。「ふしぎな水そう」などで豊かな自然を発信している=若狭町世久見

 若狭湾と三方五湖の豊かな自然を学び、体験できる福井県海浜自然センター(若狭町世久見)が7月、開館25周年を迎える。2023年度末までで230万人以上が来館。充実した水槽での生体展示や体験講座で自然保護意識を醸成している。

多彩な体験講座

 5月中旬、センター前の食見海岸で子どもたちが腰まで水に漬かり、へらを使って海中の岩から海藻をはがしとっていた。センターが開いた体験講座で、県内外の親子連れ8組が参加。標本作りも行い、越前市から母親、兄、妹と参加した児童は「思っていたより、たくさんの種類の海藻があった」と目を丸くしていた。

海藻の標本作りに取り組む親子連れ

 体験講座はシュノーケリングや磯の生き物観察、三方湖の伝統漁法「たたき網漁」など多彩に展開。予約制で年間約30種類を50回以上開いており、9割以上が定員に達する人気ぶりだ。金森所長は「シュノーケリングなどは数日で定員が埋まってしまう。予約不要で、センターで気軽に体験できる貝殻や海藻などを使ったクラフト講座も好評だ」と話す。

海湖(うみ)を学ぶ空間

 1999年の海の日(7月20日)に開館した県海浜自然センター。2005年に三方五湖が国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録され、14年4月には「うみ(海湖)の学びと癒やしの新空間」をコンセプトにリニューアルオープンした。

 水槽は大小35個ある。魚に餌やりできる1辺2メートルの立方体型の「ふしぎな水そう」が目玉で、地面から90センチの高さにある餌やりポケットは、水槽を真空状態にして、流れ出ようとする水の力と大気の圧力を釣り合わせることで水があふれない。海の魚に触れられる「タッチプール」や三方五湖の魚類を湖ごとに展示する水槽などもあり、生き物に親しめる。

 入館料は無料で、年間6、7万人程度だった来館者はリニューアル以降は毎年11万人以上となった。新型コロナウイルスの影響で20、21年度は落ち込んだものの、22年度からは再び11万人を超えている。本年度も5月末までで前年度同期比7%増と好調に推移。3月の「ふしぎな水そう」のリニューアルや北陸新幹線敦賀開業の効果と考えられるという。

地元との関係大切に

 次の10年、20年に向け、同センターは地元とのつながりを今まで以上に大切にしていきたいとする。敦賀市から高浜町までの漁師からは珍しい生物が見つかると提供があるなど、センターを支える存在だ。7月14、15日に開く25周年記念イベントでは、マダイのつかみ取りやタコ漁の見学などで若狭町の漁師に協力してもらうという。

 体験講座の中で一番人気があるシュノーケリングでは、40、50代を中心とした県内外の15人ほどにローテーションで指導者を務めてもらっている。将来を見据え、若い世代を育成していこうと、6月に2回開く指導者養成講座には県立大の学生に参加してもらう予定だ。

 25周年記念ではこのほか、7月20日から2カ月間、若狭湾の生物や自然環境を紹介する特別展示を行う。金森所長は「海と湖を体感し、自然保護の大切さに気付いてもらえる場所であり続けられるよう、地元や関係機関の協力を得ながら運営していきたい」と力を込める。

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