福井県小浜市が立命館大と共同で2021~22年度に行った、市の特産品「若狭小浜小鯛ささ漬」に関する調査成果をまとめた書籍が完成した。文献調査や生産者らへの聞き取りを通し、小鯛ささ漬の誕生や流通が「御食国(みけつくに)」の歴史と深く結びついていることを裏付ける内容で、写真を多用し一般向けにも分かりやすく説明。市の担当者は「貴重な食文化をより多くの人に知ってほしい」と話している。
小鯛ささ漬は、日本海でとれたレンコダイを三枚におろし、塩をして酢に通したあとスギの小樽に詰めて作られる。市は、特色ある食文化の文化財登録に向けた調査研究や保護継承を支援する文化庁のモデル事業採択を受け、立命館大食マネジメント学部と共同で21年10月から初の本格的な調査を実施した。
書籍「さくらいろのごちそう 御食国ストーリー『都への贈答食文化』」は、A4判58ページ。前半では製造工程のほか、誕生までの歴史や現在の生産状況を紹介。生産者や小鯛ささ漬を長年扱う老舗の料理人たちの聞き取り調査の内容も掲載している。後半は、市学芸員や同大教授が文献調査などから得た知見を解説している。
小浜は朝廷の食を支える「御食国」として、古くから多くの海産物を京都に運んだ歴史があり、小鯛ささ漬は明治後期、小浜の魚商と京都の商人の協力で誕生した。聞き取り内容からは、交通網が未発達な時代、日持ちする上に塩抜きの手間がなく鮮魚に近い状態で食べられる小鯛ささ漬が重宝されていた様子がうかがえる。文献調査では、江戸初期に小鯛ささ漬の前身と考えられる「若狭小鯛」が登場し、幕末の天皇の1人が好んでいた記述が見られるなど、江戸時代から名の知れた食品だったことも分かる。
調査を行った市の担当者は「海産物を都に届ける中で、加工品の一つの到達点として誕生した歴史を学術的に明らかにできた」とし「小鯛ささ漬を今後も継承していくため、若い人にも食べてもらい関心を高めてほしい」と話している。
市内2図書館で貸し出すほか、市ホームページで全内容を公開している。
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