若狭路文化研究所と共同で王の舞の写真集を制作した吉田さん=敦賀市野坂

 福井県嶺南地域で中世から続く民俗芸能の歴史を残そうと、敦賀市の写真家吉田さんが、嶺南5市町18神社で受け継がれ、豊作や豊漁を祈る芸能「王の舞」の写真集を、歴史民俗研究者で構成する若狭路文化研究所と共同で制作した。吉田さんは「それぞれの舞の特徴を感じられる一冊にできた。多くの人に伝統芸能への関心を高めてもらえる一助になれば」と期待している。

 吉田さんは長年、各地域で王の舞を撮影している。少子高齢化や生活様式の変化で伝統芸能の継承が年々困難になっている現状を踏まえ、2年ほど前、現地で顔なじみの同研究所の垣東副所長に写真集の共同制作を提案。吉田さんが撮影とページ構成を、垣東さんがそれぞれの舞の解説文を担当した。

 吉田さんが昨年までの7年間で撮影した獅子舞などを含む計172枚の写真を掲載。若狭町気山の宇波西神社の王の舞では、舞い手が朱色の衣装に鳥かぶとと鼻高面を着けて鉾(ほこ)を持ち、勇壮に舞う姿を撮影。同神社に特徴的な力強く迫力のある舞を写真で表現した。対して、しなやかで華麗な動きが特徴で「女の舞」とも呼ばれる美浜町宮代の彌美(みみ)神社の王の舞は、鮮やかな赤の衣装に身を包み、優美にゆったりと舞う様子を伝えるなど、各神社の舞の特徴が分かるよう写真の構図を工夫した。

 解説では、美浜町佐田の織田神社の王の舞は「デンデンデン」のかけ声に合わせて足踏みすることなど、各神社の王の舞の動き方を詳細に記し、それぞれの歴史や衣装についても分かりやすく紹介した。垣東さんは「写真と合わせて読むことで楽しみながら王の舞を知ってもらえると思う。これを参考に現地に足を運んでもらえたらうれしい」と話している。

 写真集は同研究所発刊、岩田書院(東京)のオンラインサイトなどで購入できる。A4判86ページ、2200円(税込み)。問い合わせは、岩田書院=電話03(3326)3757。

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