福井県敦賀市沓見に伝わる県指定無形民俗文化財「沓見御田植祭」が5月5日、区内で行われた。伝統衣装をまとった地元住民の行列が二つの神社の間を行き来し、市内で唯一継承されている「王の舞」や田植えの様子を表現した神事芸能を両神社で奉納。五穀豊穣(ほうじょう)を願った。
区内にある男宮の信露貴彦(しらきひこ)神社と女宮の久豆彌(くつみ)神社が合同で行う春祭りで、新型コロナウイルスの影響で5年ぶりの実施。両神社で神事芸能を交互に奉納する。地元住民らでつくる保存会によると、平安中期から続くとされ、途絶えた時期もあったが2003年に保存会が復活させた。
酒奉行や神主、祭りを取り仕切る「諸人衆(もろとしゅう)」の老若男女が平安期の装束などに身を包み、男宮、女宮とも40人弱の行列を編成。沓見公会堂を出発し、それぞれの神社に向かった。御幣を高く掲げ「ヤーホーハイヤー」と独特のかけ声や鼓笛を響かせ、にぎやかに練り歩いた。
信露貴彦神社で奉納を終えた男宮の行列は、久豆彌神社へ向かって約1キロ歩き、出迎えた女宮の行列と合流。見物客が取り囲む同神社拝殿で、男宮と女宮の子どもたちが交互に王の舞や獅子舞を厳かに奉納した。男衆は田植え歌を歌い、農具の「えぶり」と苗に見立てた杉の葉を使って田植えの様子を表現した。
その後、男宮と女宮の行列は一緒に信露貴彦神社へ移動。最後は同神社近くの「馬場(ばんば)」と呼ばれる場所で、互いの御幣を合わせて祭りを終えた。御幣の紙は、玄関先や窓に飾ると無病息災が保証されると伝わり、住民が奪い合うようにして家に持ち帰った。
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