• 歴史的な町並みの残るエリアの空き家を活用し昨年初開催された「御食国まち歩きマルシェ」=2022年11月12日、小浜市鹿島
  • 「小浜西組エリア全体の魅力を伝えたい」と話す畑田さん=12日、小浜市飛鳥の「蓬嶋楼」
  • 毎年7月に大祭が開かれる庚申堂。多くの身代わり猿がつるされている
  • 三丁町の軒下につるされる「身代わり猿」=小浜市飛鳥
歴史的な町並みの残るエリアの空き家を活用し昨年初開催された「御食国まち歩きマルシェ」=2022年11月12日、小浜市鹿島

 国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)「小浜西組」があり、風情を感じる町並みが残る福井県小浜地区。北陸新幹線敦賀開業を前に、一帯のまち歩きを促すマルシェが昨年から開催されるなど、観光資源としての活用を図り新たな動きが出ている。一方で、昔ながらの風習を守り続ける住民たちや、訪れる人に歴史を語り継ぐ存在もいる。

「小浜西組」 重伝建町並み 守り磨く 10月マルシェ、規模拡大

 小浜湾と後瀬山に挟まれて位置する小浜西組は、2008年に国の重伝建に選定された。かつての商家や茶屋が軒を連ねる町並みは1871(明治4)年の地籍図とほぼ同じ形態で、中世以降の街路や地割をよく留めている。ベンガラ格子や折り畳み式の縁台「がったり」、防火壁となる袖壁など特徴的な外観が残っており、レトロな雰囲気が感じられる。

 小浜西組エリアを中心に、市まちの駅・旭座から西に約1キロ周辺の通り沿いに飲食や物販の出店が並ぶ「御食国まち歩きマルシェ」が、10月7~9日に開催される。北陸新幹線敦賀開業に向け、歴史的な町並みを観光資源として生かそうと、小浜市の第三セクターまちづくり小浜が企画。初開催した昨年より出店者数を増やし、グルメブースを充実させるなど規模を拡大させる。

 エリア内に点在する空き家となった町家を出店スペースとして貸し出すのがマルシェの特徴で、イベント時だけでなく継続的な営業につなげる新規事業者誘致の狙いがある。8、9日には住民団体が主催する別のマルシェイベントなども同時開催され、地域一体となって盛り上げる。

 まちづくり小浜の御子柴社長は「昨年の出店者には『またここを使いたい』と気に入ってくれた方もいた。事業者と来場者双方に小浜をアピールするきっかけにできれば」と話した。今月末まで出店者を市内外から募っている。問い合わせは同社=電話0770(56)3366。

ボランティアガイド・畑田さん 散策楽しむヒント工夫

 小浜西組の飛鳥、香取両区にまたがり、かつて茶屋町として栄えた通称「三丁町」にある旧料亭「蓬嶋楼(ほうとうろう)」。明治~昭和に営業し、2015年からは土日祝日限定で無料見学できる。畑田さんは、常駐のボランティアガイドを15年当初から務めている。

 三丁町そばの大原の生まれ育ち。「子どものころは夜に三味線の音が漏れ聞こえ、眠るときのBGMだった。昼間はいたずらを仕掛けに遊びに行き、大人にばれては怒られた」。懐かしい思い出が数々ある。

 観光客に楽しんでもらうため、ガイドの仕方は反応を見ながら変える。蓬嶋楼の歴史や建築を詳しく説明する場合もあれば、昔話で笑わせるときもある。加えて、三丁町や小浜西組の散策が「ちょっと楽しくなるヒント」を渡す。「1階の天井が高ければ商家、2階が高いのは茶屋」「桃の形の瓦が乗っている家があるから探してみて」

 訪れる人の中にはリピーターもおり、紹介された知り合いが来てくれることもある。畑田さんは「蓬嶋楼だけでなく小浜西組全体に興味を持ってもらいたい。にぎわいづくりにつなげることが、私ができる町への恩返し」と力を込めた。

軒下に「身代わり猿」 庚申信仰の教え今も

 三丁町の軒下につるされる真っ赤な「身代わり猿」。写真映えするただの飾りではなく、魔よけの役割を持つ庚申(こうしん)堂のお守りだ。

 三丁町の飛鳥区にある庚申堂は1649(慶安2)年に小浜藩主・酒井忠勝の息女が起願し建立された。お堂は戦後荒廃したが、1972年に住民が浄財を出し合い再建。40周年を記念し2012年から、住民の発案で本尊・青面金剛像の使いをかたどった身代わり猿がつるされるようになった。

 庚申信仰は道教が由来とされ、60日ごとの「庚申(かのえさる)の日」には、人間の体内にいる「三尸(さんし)の虫」が神様に悪行を告げ口する言い伝えがある。お堂では現在も毎年7月に大祭が開かれ、三尸の虫を退治するとされるこんにゃくが販売される。

 今年の大祭は23日。4年ぶりに開かれる。庚申堂世話人会の会長は「昔に比べ規模は小さくなっているが、住民が楽しみにしている歴史ある行事。大切に続けたい」と話した。

 小浜市小浜地区 市中心市街地西部に位置し、中世から若狭の中心的港町として栄えた。市食文化館やマーメイドテラスがあり、秋には県無形民俗文化財に指定されている八幡神社の例祭「放生祭(ほうぜまつり)」が営まれる。人口3642人、世帯数1666(6月30日現在)。

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