盗まれても、必ず無事に戻ってくる-。そんな逸話を持ち、福井県小浜市内で地元住民が大切に守ってきた国指定重要文化財の仏像が、同市の県立若狭歴史博物館で5月21日まで特別公開されている。普段は非公開で厨子(ずし)に入っているため、正面だけでなく横顔や背面も含めゆっくりと眺めることのできる貴重な機会となっている。

 仏像は、正林庵(しょうりんあん)(同市太良庄(たらのしょう))の銅造如意輪観音半跏(はんか)像。太良庄は鎌倉時代には京都の東寺の荘園だった地。1240(仁治元)年、東寺から仏像がもたらされたと伝わる。

 像高は33センチ。7~8世紀のものと考えられ、若狭地方で最も古い時期の像の一つとされる。右足を左膝の上に置き、右手を頬に当てて思案を巡らせる「半跏思惟(はんかしい)」と呼ばれる姿で、童顔の愛らしい顔立ちや精巧な作りの胸飾りなどが目を引く。

 江戸時代以降4度の盗難に遭い、売られてしまいそうになるものの、不思議と必ず戻ってきたという話が伝えられている。最初の盗難から戻った際に庄屋だった高鳥甚兵衛にちなみ、地元で「甚兵衛観音」と呼ばれ、住民の手で大切に守り継がれてきた。今回、厨子の修理に伴い一時的に同館が預かることになり、特別公開した。担当職員は「レアな展示なので、この機会に一目会いに来ていただければ」と話した。

 午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。21日まで無休。一般310円、高校生以下と70歳以上は無料。期間中は、昨年度新たに収蔵された資料30点以上を紹介する令和4年度新収蔵品展も開催されている。

(※福井新聞社提供。無断転載を禁止します。記事に関するお問い合わせは福井新聞社へ。)