• 本格的な抱卵に入ったとみられるコウノトリの雄(左)と雌=2日、若狭町鳥羽地区(県・同町提供)
  • 巣から顔をのぞかせるコウノトリのひな4羽と親鳥=8日、小浜市国富地区(コウノトリの郷づくり推進会提供)
本格的な抱卵に入ったとみられるコウノトリの雄(左)と雌=2日、若狭町鳥羽地区(県・同町提供)

 国の特別天然記念物コウノトリが、福井県内で繁殖地を広げている。今年は新たに若狭町鳥羽地区で産卵が推定され、野外での繁殖活動の確認は坂井市、越前市、小浜市、鯖江市に続き5市町目となった。兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園によると、1971年に国内で野生種が絶滅したコウノトリの野外個体数は3月末現在で298羽。2022年は福井県内で4ペアのひな計12羽が巣立っており、急速に進む野生復帰の重要な一翼を担っている。

 県によると、今年コウノトリが産卵したのは同町のほか越前市3カ所と小浜市。このうち越前市の2カ所と小浜市でふ化が確認され、県内では2019年から5年連続で野外でひなが生まれている。

 コウノトリの野生復帰の試みは、兵庫県が2005年に世界で初めて豊岡市から放鳥して本格化した。福井県は11年に兵庫県と連携し事業に参加。越前市白山地区でペアの飼育を始め、放鳥などを経て、17~19年は同市で産卵やふ化が確認されたが、巣立ちには至らなかった。

 19年に坂井市で生まれたひなが、県内の野外で58年ぶりの巣立ちを果たし、以降は20年に越前市、21年は越前市2カ所と小浜市、22年は鯖江市でも巣立ちが確認された。県内のペアの多くが自治体や地元団体が設置した人工巣塔に営巣しており、県が把握しているだけで6市町に計16基ある。

 県内の繁殖地拡大について、県自然環境課の担当者は「多くの餌が必要なコウノトリが生息できる豊かな自然環境の表れ。環境に配慮した農業など、地元の人が生き物と共生する地域づくりを積み重ねた結果ではないか」と話している。

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