1年未満の短期間で養殖したマガキを試食する関係者=28日、小浜市食文化館

 福井県小浜市が市内漁業者や県立大と連携し、小浜湾内で採取したマガキの種苗を使った試験養殖に成功した。栄養豊富な湾内で育てるため成長が早く日本海側で初めて1年未満での出荷が可能となる。また設備投資により生食用としても出荷できる態勢を整えた。今後ブランド化を検討しながら販路拡大を目指す。

 同市のカキ養殖は、県外から取り寄せたマガキの種苗をホタテの貝殻などに付着させて育てる「カルチ方式」が主流。2019年度以降は、生育を妨げる不要物が付着しない利点があるとして専用かごを使った「シングルシード方式」での試験養殖も始めた。

 今回、他県から取り寄せている種苗を小浜産に切り替え“純小浜産”でブランド化を図ろうと計画。昨夏、小浜湾内でマガキの採苗を行いシングルシード方式で育てたところ、約7カ月で出荷サイズにまで成長した。マガキの養殖期間は通常2、3年とされ、1年未満は珍しいという。同大海洋生物資源学部の浜口昌巳教授(61)は「小浜湾内は餌となる植物プランクトンが多く成長が早いのではないか」と推測している。

 同市では、カキに含まれる菌や不純物を取り除くための浄化水槽を新たに導入。これまでの加熱用に加え、新たに生食用として出荷することが可能となった。

 28日に新方式で養殖された生のマガキが市内でお披露目され、関係者約30人が試食した。試食した県嶺南振興局の男性は「短期間での養殖なのに身入りが良く、甘みやうまみを強く感じる。万人受けすると思う」と話した。生産者の男性は「1年サイクルで養殖できるのはすごい。今後ブランド化を進めていってほしい」と話した。

(※福井新聞社提供。無断転載を禁止します。記事に関するお問い合わせは福井新聞社へ。)