江戸時代の絵師伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716~1800年)と福井県高浜出身の禅僧で門弟の維明周奎(いめいしゅうけい)(1731~1808年)に焦点を当てた春季特別展「伊藤若冲と若狭の禅僧」(福井新聞社後援)が4月24日、高浜町郷土資料館で始まった。繊細な筆遣いで生き生きと動植物を描いた水墨画など約30点が並び、禅宗文化の広がりを感じることができる。5月28日まで。
京都の裕福な青物問屋で育った若冲は、商売への関心は薄く自身の創作意欲のままに絵を描いていたとされる。後に親友となる京都・相国寺の高僧と出会ってからは、同寺を拠点に創作活動を行い、水墨画や花鳥図の大作など多彩な作品を残した。特別展では主に相国寺が所蔵する作品を並べた。
展示されている水墨画は、水の上を跳ねるコイを躍動的に表現した「昇鯉図(しょうりず)」、松の大木と3匹の亀が目を引く「松亀図」など生き物が登場するものが多い。墨の面と面の間を白抜きし筋目のように浮かび上がらせる「筋目描き」は若冲が得意とした技法で、コイのうろこや亀の甲羅を墨の濃淡で細やかに表現している。
動植物をモチーフにした若冲の作風は、弟子の周奎にも受け継がれている。三幅一対の「渡唐天神・白梅図」には、中央に梅の枝を手にする菅原道真(天神様)、左右に梅の木が描かれている。空高くに枝を伸ばし雪の重みに耐える梅からは生命力が感じられ、周奎が若冲と同様に梅を描くことに優れていたのが分かる。
午前9時~午後5時(入館は同4時半まで)。期間中無休。一般600円、小中学生300円。30日午前10時半から同町文化会館で、相国寺塔頭大光明寺の住職が若冲と相国寺の関わりについて記念講演を行う。問い合わせは同資料館=電話0770(72)5270。
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