福井県敦賀市の公設書店「ちえなみき」が12月2日、来店者10万人を突破した。オープンから3カ月余りで達成。小説から漫画、絵本、専門書、古書、洋書などテーマ別に選書された本が不規則に並ぶ独特の書棚空間は来店者を魅了している。県内外から“本との出会い”を求める人が足を向けているようだ。
■うれしい想定外
「ちえなみき」は9月1日、市が官民連携で整備したJR敦賀駅西地区エリア「TSURUGA POLT SQUARE 『otta(オッタ)』」の一角にオープン。迷宮のように入り組んだ本棚に売れ筋ではない書籍も含めた3万冊をそろえる。
絵本やエッセー、啓発本などを思い思いに選んで一度に何冊も購入する家族連れ。一冊の本を開いて見入る母親と子ども…。お忍びで訪れた作家が書棚をSNSで発信することもある。3カ月での売り上げは約7千冊となった。
店長の笹本さんは「『一度にたくさんの本を手に取ってしまう』と言って購入される人や、本棚の前で『ずっと読んでいられる』と言う人もいる。古書や洋書は『福井でも買えるんだ』と喜んでもらえたり。うれしい想定外をいくつも生み出せた」と振り返る。
■創作、読書体験も
独自の書棚空間に加え、にぎわいの一助となっているのが、土日を中心に開催しているさまざまなイベントだ。
3カ月間で約40件を開催。和紙のドームライトや絵本づくりなど創作系から、クイズや知育玩具紹介といった知的好奇心をくすぐるもの、駅西広場公園に並べたハンモックで読書を楽しんでもらう体験など延べ500人が楽しんだ。
笹本さんは「気になるイベントに参加しやすいだけでなく、地元の方が一歩踏み出して、イベントをする側になるきっかけの場所にもしてもらえたら」と話す。
■感動の場に
全国でも珍しい市営書店「八戸ブックセンター」(青森県八戸市)は今月4日、6周年を迎えた。継続的に集客できている理由として、所長の音喜多信嗣さんは「開設時からの方針である『地方の民間書店で出会えない本の提供』をぶれずに継続していること」とする。特色あるイベントや、ほかの公共施設や民間書店などとの連携の必要性も指摘する。
「ちえなみき」では、市立図書館のイベント協力や、本町1丁目商店街にある明治創業の老舗「千田書店」とのコラボ企画など連携に乗り出した。その上で「来た人がワクワクするような本棚を維持していきたい。知らない世界に興味を持ったり『ここだからこそ、こんな本に出会ってしまった』みたいな感動を得る場所にしたい」と笹本さん。ちえなみきのエプロンをした店員たちは、頻繁に書棚に手を伸ばし「出会いの場」の調整を続けている。
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