全国高校選抜大会は3月21日、各地で競技が行われた。福井県勢はローイング(旧ボート競技)の女子かじ付きクオドルプル美方(満田真央、武田望花、小野寺紗耶、岩本結愛、野瀬彩音)が中止の2020年を挟み5連覇を達成。男子かじ付きクオドルプルの美方(赤尾寛太、天渡羅偉、石田歩、浜松紘生、岡本風哉)は同校勢として2年ぶりに頂点に立った。
女子シングルスカルでは志賀祐月(美方)が準優勝だった。男子ダブルスカルの若狭東(井上桂吾、山田浩太)は4位だった。
【男子】「捉えた」ここぞのスパート
「捉えた!」。1000メートル地点でライバル艇の背中が見えた瞬間の、バウの岡本風哉の掛け声が、男子かじ付きクオドルプル美方のスパートの合図だった。残り500メートルで突き放し、終わってみれば約5秒差をつけ頂点に立った。
後半勝負は想定内だった。前日の準決勝、ライバルの関西(岡山)と熊本学園大付の前半タイムが良かったことから「前半で(相手が)つぶしに来るのを逆手に取る」(岡本)と決めていた。
5人とも2年生。1年の秋以降、昨夏の全国高校総合体育大会(インターハイ)以外は全てこのメンバーで戦ってきた。チームワークはどのクルーにも負けず、全員が遠慮なく意見を出し合えるのも強み。アジアジュニア選手権かじなしクオドルプル優勝メンバーの岡本を、技術力や視野の広さを最も生かせるとバウに据えたのも、メンバー間での話し合いの結果だった。
この冬、主将の天渡羅偉と浜松紘生のエルゴメーターの成績が低迷した。それでもほかの3人に、メンバーを代える気はなかった。「このメンバーにしかない一体感があるから」と岡本。その気持ちに応えようと2人は奮起した。
メンバーを代えたくなかった理由がもう一つ。昨年の大会が6位で「リベンジするならこのメンバーで」との目標を掲げ、この日までやってきた。天渡主将は「悪いときもいいときもこの5人でやってきて、みんなで高め合ってきた。言葉にならない思い」と喜びをかみしめた。(土生仁巳)
【女子】伝統つなぎ圧巻5連覇
1000メートルを越えてから、後続をぐいぐい引き離した。女子かじ付きクオドルプルの美方は、昨年の高校3冠メンバーが3人抜けても、2位以下に10秒以上の差をつける圧巻のレース展開。中止になった2020年を挟んでの5連覇に、岩本結愛主将は「先輩たちの伝統をつなげてうれしい」と喜びに浸った。
3冠クルーに比べパワーは劣る。だが、身長160センチ台後半の2年生、岩本主将、武田望花、小野寺紗耶ら、こぎ手の1本のストロークは長い。その特性を生かすべく、正確に後ろの水を捉えるストローク技術を磨いてきた。
予選前日の公式練習で「タイミングが合っていない。クルーの調和がいまいち」と感じた清水寛之監督は、武田のポジションを3番からストロークに変更した。ストロークはピッチの上げ下げやペース配分、リズムなどをつくる重要なポジション。これがピタリとはまり、予選、準決勝とも2位以下に大差をつけた。昨年の高校3冠メンバーでコックスの満田真央は、ポジション変更で「かなりかみ合った。船を軽く運べているという実感が持てた」という。
武田は昨秋の中部高校選抜大会で、緊張からオールを腹部に引っかける「腹切り」をして2位に沈んだ苦い経験がある。「緊張したら勝てない。どこに乗っても船を進めよう」と平常心を保つよう心掛け、力を出し切ることができたと振り返った。
メンバーの次の目標は、来月のU19(19歳以下)世界選手権代表選考会。それぞれが女子シングルスカルで日本代表入りを目指す。岩本主将は「きょうまでは味方だけど、ここからは全員がライバル」と明るく話した。
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