昭和時代の集落の様子を伝える地図を制作した佐田伝統文化保存会の中道会長(右)ら=26日、美浜町佐田公民館

 福井県美浜町佐田の住民有志でつくる佐田伝統文化保存会がこのほど、昭和時代の集落の様子をまとめた地図を完成させた。今はなき飲食店の名前や風景写真を地図上に載せ、住民に「タイムスリップ」気分を味わってもらう。地道な聞き取り調査でまとめた方言や屋号などの表もあり、完成までに約2年かかった労作。同会は「若い人にも愛着を持ってもらうきっかけになればうれしい」と話している。

 かつての集落の様子を後世に残そうと企画し、2021年4月に制作に着手した。同会役員9人に加え、佐田老人クラブのうち約10人が協力。約300世帯ある集落の各戸を訪問し、80~90代の古老から聞き取り調査したり事実の確認作業をしたりして、完成させたという。

 地図では昭和時代にあった飲食店や名所など約100カ所を紹介。青年部が集まっていた「青年道場」のほか、葉タバコの乾燥場やパチンコ店、ナシ園など、今では残っていないものも載せている。かやぶきの家がある集落や川で洗濯する女性の写真もあり、当時の雰囲気が伝わってくる。

 「てんぽに(大変)疲れた」「やうち(仲間)」「やすんぎょー(田植え終えての休み)」など、集落に伝わる「織田(おった)弁」や独特な話し言葉も約450語を収録。今でも使われるという屋号も約90件をまとめ、なじみのない若い人の参考になる。このほか田舎に伝わる言い伝えや習わしなども掲載した。

 大きさは横5・4メートル、縦2メートル。今後は佐田公民館に掲示し、住民にいつでも見てもらえるようにする。地図は新たな情報が入り次第、随時更新していくという。同会の会長は「立派に出来上がった。思い出話に花を咲かせてほしい」と話していた。問い合わせは同会事務局長の町野さん=電話080(8695)1440。

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