明治時代中頃から終わり頃に発行されたチラシ「引札」の特集展示=28日、敦賀市立博物館

 明治時代中頃から終わり頃に発行された、福井県敦賀港にひしめいていた運送業者や小売業者のチラシ「引札(ひきふだ)」の特集展示「楽しい引札の世界」が、敦賀市立博物館で行われている。1884(明治17)年の長浜―敦賀(金ケ崎)間の鉄道全線開通による港の繁栄がうかがえる華やかな21点が並ぶ。4月11日まで。

 引札は江戸~大正時代の商店のチラシ。大量に印刷され、街頭で配られたり、年末年始のあいさつ代わりに得意先に送られたりした。

 陶器商の引札には、小脇に帳簿とそろばんを抱え、右手に筆を持った人物が描かれている。亀に乗っているため浦島太郎と考えられ、カラフルで目立つ仕上がりになっている。背景には文明開化を象徴する汽車や工場がある。

 学芸員によると、日本海側で最初に鉄道が敷かれた敦賀に残された引札の絵柄は、他の地域に比べ鉄道や船に関係するものが多い傾向にあるという。魚問屋の1894(明治27)年発行の引札は、鉄道路線図が描かれており、当時まだ開通していなかった富山までの鉄道は「工事中」となっている。

 大手印刷所発行のカタログから絵柄を選び、デザインが同じになった異なる商店の引札や、文章を長々と書いて人目を引きつけようとしたものなども展示されている。学芸員は「当時の人々の、文明開化の世の中に対する期待や商売繁盛への執念を感じ取ってほしい」と話した。

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