18年にわたり福井県美浜町日向でサバのへしこを製造、販売してきたグループ「女将(おかみ)の会」が、今年いっぱいで解散する。昔ながらの漬け方で誰でも食べやすい味を届けてきたが、メンバーの高齢化で継続が困難と判断した。2000年代に行政と連携してPRにも注力し、へしこの町・美浜を全国区にした立役者。同会代表は「楽しく仕事ができた。味はしっかり伝える」としている。
女将の会は05年、日向で民宿を営む女将4人で発足した。加藤さんが代表となって同年秋に漬け込み、翌年から販売をスタート。800本が2カ月で完売するほど人気だったという。現在では年間6500本を作っている。
人気の理由はマイルドな味。塩とぬかだけを使う地域もあるが、美浜はサバを塩漬けした後、秘伝の調味料を加え本漬けする製法が主流。同会はさらに地元酒造の酒かすを加え、子どもでも食べやすい味に仕上げてきたという。
身の硬さが均一になるよう日々重しの位置を調整するなど、手間を惜しまず作ってきたが、重しは計60キロと持ち上げるのは重労働。メンバーの全4人は80歳前後と高齢化し、「とても続けられない」と決断した。
町や女将らが働きかけ、「へしこの町」として同町が商標登録されたのは、同会発足と同じ05年。健康ブームの中、へしこは血圧を抑制するペプチドが豊富と注目を浴びた。当時町職員で、現在は発酵食品ソムリエとしてへしこを通じた地域活性化に取り組む伊達さんは「県内外のイベントで飛ぶように売れた。特に女将の会は人気。商品が足りず、慌てて工房に戻り樽(たる)上げしたこともあった」と話す。メディアにも多く取り上げられた。
加藤さんは「あくまでも地域活性化が目的」と、他のへしこ生産者にも製造方法を教えてきたという。地域一丸でPRに取り組むようになり、やがて美浜のへしこの知名度は全国区になった。伊達さんは「加藤さんのような作り手がいなければここまで有名にはならなかった」と振り返る。
同会は解散するが、加藤さんが作り方を伝えていく予定。加藤さんは「試行錯誤の末に完成し、いろんな人に愛された味を残していきたい」と話した。
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